・逃げられない世代 日本型「先送り」システムの限界
著者:宇佐美典也
出版:新潮新書
このブログ記事を読んで、ちょっと面白そうと思って、読んでみました。
https://oreno-yuigon.hatenablog.com/entry/2018/07/21/190330
この本の対象は20代から30代。
…となると僕は「逃げられる世代」?
まあ、そうは思えないけどw。
でも結構良くまとまってて、興味深く読めました。
50代ですが。
第1章が「先送り」をしてしまう日本の政治構造について。
もちろん「問題」なんですが、それが機能してた時代もあり、一定の意味を持っていたことが説明されます。
第2章は社会保障制度と財政危機について。
これは「未来の年表」なんかでも解説されてることで、ある意味ではその「確認」。
「年金積立金」のことはあまり認識してなかったかな。
第3章は「安全保障」。
戦前から現在まで、「経済」と絡めながら流れを整理してくれてます。
本書の特徴はこのパートかもしれませんね。分かりやすく、納得感のあるストーリーを語ってくれてます。
中国の台頭を背景に、朝鮮半島情勢が激しく揺れ動いている現在、個人的にもココへ興味が強まってるってのもありますかね。
そしてこれを踏まえての第4章「私たちはどう生きるべきか?」。
ある程度「先送りする政治構造」を前提に、ギリギリのラインを予測しつつ、自分たちの世代への期待と希望について語っています。
本書自体は前章までの「分析」がメインで、この章は「頭出し」的ではありますが、安全保障と原子力発電を絡ませる等、踏み込んだスタンスもあります。
政治や官僚の限界を指摘しつつも、保守寄りのスタンスが強いのは元・官僚故?w
僕はもうちょいリベラル寄りだと思いますが、全体として「議論の前提」をよくまとめている一冊だと思います。
僕らの世代が「逃げられる」かどうか。
まあ色んな前提が置かれてますから、「分からん」と言うのがほんとのトコでしょう。
社会保障制度という観点からは「経済成長がどうなるか?」。
端的には金利と株価の動向が大きいです。
それ以上に「世界情勢」による経済環境の変化と安全保障の点は、「今すぐ」にでも変動しうる要素もあって、不透明度を増してます。
(戦前のブロック経済の流れを現在の世界情勢に重ねることもできるでしょう。軽々とそっちには行かないと信じたいですが)
トランプさんがそこに拍車をかけてますしw。
ただどうであれ「変わって行かなきゃいけない」ってのは間違いない。
そのためには議論をし、折り合いを見つけながら、変化を受け入れて行かなければならない。
それでも日本が「No1」になるようなことはなさそうですが、良い社会、明るい未来を引き寄せることはできる。(…と思いたい)
そのための「現状認識」として一読に値する本だと思います。