鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

なぜ40万部も…:読書録「応仁の乱」

応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱
著者:呉座勇一
出版:中公新書

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)


お堅い本ながらベストセラーとなったことで有名な一冊。
ちょっと前に購入してたんですが、やっぱり「お堅そう」でw、ちょっと手を出し兼ねてたんですが、ようやく読みました。


細川・畠山の管領を巡る争いから、細川・山名のガチンコになり、これに将軍家の後継争いが絡んで…
って基本的なアウトラインについては記憶通りでしたw。
ゴシップ的な記憶にあった日野富子の暗躍は、どうもフィクションのようですが。(もっとも乱後(明応の変)には活躍されたようでもありますw)


足利幕府は、大名(守護)を京都に集めて政権を運営しており、そのため領国経営は国人・家臣団に任せていたものの、幕府の権威の失墜と騒乱で財政が悪化した守護の力の低下が領国の守護代・家臣団の台頭を招き、下克上の時代が…
っていうのが「乱の影響」で、ここら辺もまあ、「教科書」通り。


本書を読んで感じたのは、
「それにしても主要な登場人物が、悉く思惑を外す」
という展開の情けなさ。まあ、この「外しっぷり」はある意味徹底していて、面白いくらいですw。
な、もんですから、戦いが決定的な局面を迎えることなく、そうこうするうちに足利義政がアッチヘふらふら、コッチへふらふら。
それがまた事態を複雑化して…。
まあ、この「読みの甘さ」やら「定見の無さ」やらが、当時の政権の弱体化の表れであり、そういう意味では「起きるべくして起きた」大乱なのかもしれません。
京都民にとっては迷惑な話ですが。


本書は京都視点ではなく、関係がないわけではないけど、直接の関係者とは少しポジションの違う興福寺関係者の視点から「乱」の経緯を見てて、それが「読みもの」的な面白さに繋がってる面も無きにしも非ず、です(結構人間的な登場人物ですので)。
ただまあ、マニアックっちゃあ、マニアックなアプローチでもあり、
「なんで、この本がこんなに売れたんだか…」
ってのはちょっと「?」。
山ほど人物が出てきて、そのほとんどが「知る人ぞ知る」レベル(僕は全然知りませんでしたw)。
戦国大名の物語を読むのとは全く趣が違いますから、そんな万人ウケする内容とは思わないんですが…。


…ってのは、読者をバカにしすぎ?
こういう本が売れるってのは、基本的には喜ばしいことでしょう。
柳の下のドジョウの「観応の擾乱」はちょっと逡巡しちゃいますがw。