鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

ちょっと理解が追いつかんとこもありますがw:読書録「リスク時代の経営学」

・リスク時代の経営学
著者:植村修一
出版:平凡社新書

リスク時代の経営学 (平凡社新書)

リスク時代の経営学 (平凡社新書)


「競争の戦略」「競争優位の終焉」「企業戦略論」「イノベーションのジレンマ」「マネジャーの実像」「ビジョナリーカンパニー」「巨象も踊る」等々の経営学の名著を、「リスク」という視点で読み解いた作品。
まあ、IT技術の進展や、「冷戦」後の思想の多様性や流動性によって、社会もビジネスも変化が激しくなって、「リスク」をどう捉えるかっていうことが重視されるようになっていますが、もともと「ビジネス」にとって「リスクをどうコントロールするか」というのは非常に重要な視点です(テイクするにせよ、回避するにせよ)。従って多かれ少なかれ、どの経営学の名著もそういう視点は含まれているのは確か。それをこういう形で俯瞰するっていうのは、頭の整理には役に立ちます。


作者は日銀で金融機関のリスク管理を担当していた方で、今は大学で教えているようです。その経歴からうかがえる「堅さ」や「学者っぽさ」が時々窺えて、「もうちょっとわかりやすく説明してほしいなぁ」ってとこも「なきにしもあらず」でしたが(リスクの定量化のとことか。ま、もともと僕の理解力を超えてるような気もしますがw)、全体としては読みやすくて、要旨や論理がスッキリとして作品じゃないかと思います。
時事的なこと(東芝の話とか)なんかにも結構触れていて、「読み物」としても存外楽しめました。


「経営学」ってのは現実の「経済事象」を扱うだけに、「後追い」になりがちですし、「読み違い」も多い学問だと思っています。
「ビジョナリーカンパニー」シリーズなんか典型じゃないですかね。「ビジョナリーとして賞揚された企業がその後…」ってのは、ネタになるくらいですからw。
ただ「だから経営学はダメなんだ」っていうんじゃなくて、それだけ「現実」と向き合うことは不確実性を覚悟しなきゃいけないことだということだと思いますし、その度合いがドンドン高くなってるっていうのが、「現代」なんじゃないかと。(だからこそ「リスク」なんですが…)
その中で「現状」を把握し、不確定な中に「目的」を掲げ、「目標」を設定し、前に進んでいく。
「ビジネス」はそういうものだし、そのPDCAを回す中に、「経営学」が何がしかの「示唆」を与える部分ってのは確かにあると思いますよ。(そして「経営学」自体が「現実」と接する中で「PDCA」を回して変貌してきているような側面があります)
それに振り回されてたら何にもなりませんがねw。


本書を読んで一番興味を持ったのはルメルトの「良い戦略、悪い戦略」でしょうか。


<戦略とは、結局のところ、コーディネートされた行動があるシステムに強制されるという形で具現化する(中略)
ただし「会社一丸となる」たぐいの戦略は、現場の知識や経験、専門性と対立し、思わぬコストを強いられるリスクがある。通常の活動はそれぞれの部署に委ね、ここぞというときに行動を一点集中するのが賢い戦略であり、賢い組織である>


(コンサルタントをしてたってのもあって)「実例」が多く引かれた、「読み物」としても面白そうな気がします。
ちょっと読んでみようかな。
…と思案中。