・捨てられる銀行
著者:橋本卓典
出版:講談社現代新書(Kindle版)
- 作者: 橋本卓典
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/05/18
- メディア: 新書
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これも仕事がらみの本。
会議で情報提供してくれた金融機関担当部長がオススメしてくれました。
直接銀行さんを担当してるわけじゃないんで、「読む必要ないかなぁ」と思ったものの、地元の地銀が実例で出ているとの話もあったので、読んでみることにしました。
…大正解。実に刺激になりました。
いやぁ、上職のオススメには従ってみるものですw。
基本的には新しい金融庁長官(森長官)の地銀対策について紹介した本です。
バブル崩壊からリーマンショックを経て、不良債権処理を中心とした銀行経営から、地域創生・地元中小企業の事業支援を中心とした地銀経営に移らなければならない…というのが問題意識の根本にあります。
まあ、「改革」ってのはトップが代わると何かと打ち出されるものですからねぇ。
斜に構えてみれば、「お手並み拝見」ってとこですが、基本的な方向性は「間違ってない」と思う内容でした。
<多くの地域金融機関は、地域の経済の発展なくしては、発展も持続可能性もない。地域の企業、産業をよくすることで金融機関自らが良くなるという両立は重要だ。健全性は、この時点の話ではなく、将来に向けての健全性のはずだ。>
それに伴う検査の見直しなんかも、
「なるほどね」
と腑に落ちるところもあったりしてw。
ただそれを担うべき地銀の現状が、予想以上に劣化している様子が次々と披露されます。
マニュアルやチェックリストばかりを見て、事業内容を見ない
チェック項目をチェックすることを仕事と思っている
リスクを外部(保証制度等)に丸投げすることで、顧客の事業内容や実情が見えなくなっている
営業目標達成が第一になって、顧客の事業コンサルをするような仕事は「コスト」とみなされるようになっている
短期融資から(保証のある)長期融資中心に融資が切り替わり、顧客訪問頻度が下がってしまい、現場で事業や実情を見る「目」が養えないetc、etc
一番恐ろしいのは、そのために地域を支える中小企業の事業支援を行うことができる知識や経験を持った人材の育成が出来なくなっているということ。
僕が我が身を振り返って「恐ろしい」と思ったのもココです。
グローバリズムは大企業を中心に企業のあり方を大きく変えています。
本書の焦点が「地域金融機関」(地銀や信金)にあるのも、都銀はメガバンクとなって、グロ−バルビジネスの方を向いたビジネス戦略に舵を切ってるからでしょう(それが上手くいってるかどうかは別ですが)。
しかし地方を支える中小企業の支援においては「グローバルビジネス」とは別の視点ややり方が必要です。
それを支えるのは地域金融機関であり、そこにグローバル社会における「地域創生」の鍵がある…ってのが今の金融庁の問題意識なんでしょう。
このことに気がつかない銀行は「捨てられる」。
その言葉が僕の胸にも突きつけられている思いがしました。
お役所がどこを向いてるのかってのはそれはそれとして、「今」の地域経済や、地域におけるビジネス(中小企業支援)を考える上で刺激になる一冊だったのは間違いありません。