・現代日本の地政学 13のリスクと地経学の時代
著者:日本再建イニシアティブ
出版:中公新書
現代日本の地政学 - 13のリスクと地経学の時代 (中公新書)
- 作者: 日本再建イニシアティブ
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/08/18
- メディア: 新書
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なにやら朝鮮情勢がキナ臭い雰囲気になって来てるのもあって(現在安保理決議が出て、北朝鮮が反発してる段階)、手に取った作品。
「日本再建イニシアティブ」は東日本大震災の時の民間事故調をベースに誕生したシンクタンクです。
個人的には「地政学」ってのは、「大風呂敷」「ホラ話」「フィクション」の類だと思っていますw。
ただフィクションが「世界観」や「大きな方向性」を共有する上で役に立つことは、「サピエンス全史」を持ち出すまでもなく理解しています。
要はその「フィクション」の「質」なんですよね。
提示されている枠組みが現実の力関係や情勢と乖離してしまうと、「バイアス」や「ドグマ」になってしまい、現実を見えなくする「ホラ話」になってしまう。
一方、現実の分析を踏まえて、アップデートされることを許容するような「フィクション」は、現状の把握と未来への対策を考え、他人と共有する上に置いて非常に役に立つ。
本書は後者の部類かと。
取り上げられている13のリスクは以下の各章で論じられています。(筆者が違うせいかもしれませんが、もうちょっと統一的な章立てをして欲しいとは思いますねw)
揺れる米国のアジア戦略
中国が脅かす海洋安全保障
朝鮮半島、危機の変容
大国意識に目覚めた中国外交
ロシア・リスクの真相
アメリカは地政学リスクとなるか
米中ロ・エネルギー三国志
サイバー戦争の時代
気候変動はリスクとなるか
トランプノミクスがもたらすもの
中国の「一帯一路」戦略
ポストTPPの日米通商戦略
地経学の台頭と日本の針路
「日本」を巡る地政学・地経学を考える上で重要なのはまずは「米国」「中国」。そこに「北朝鮮」「ロシア」「韓国」が絡んでくるというのがメインでしょう。
その中で比較的日本では「米国に対する過度な期待と評価」がある一方で、「脅威論は強く出る一方で、なぜか侮りも拭えない中国・北朝鮮」って構図が透けて見えます。
北朝鮮情勢にはこの構図が強く反映していて、それが不安と苛立ちを生んでいるようにも見えます。
現状で考えなければいけないのは、中国と北朝鮮への「侮り」を払拭もしくは棚上げすることじゃないですかね。
そもそも「脅威」と考えるくらいなんだから、両国が高い水準での軍事的・国際的戦略を遂行しているのは確かでしょう(中国には+「経済的」もあります。地経学的な視野が必要とされる所以でもあります)。ここを冷静に把握・分析し、リアルに戦略を練って行くことこそ「国益」に叶うと考えます。
感情論は「希望的観測」につながり、往々にして足元を見失わせます。「嫌中論」や「嫌韓論」の危うさはそこじゃないか、と。
米国やロシアの状況と思惑
韓国や東南アジア諸国の立ち位置etc
中国・北朝鮮だけではなく、日本を巡る各国の情勢やスタンスに関して、本書は一定の視座を与えてくれます。
個々については知ってること、聞いたことがあることばかり。
それを大きな構図の中に組み入れることに「地政学」の意味があると思いますし、本書はその役割を果たしてるんじゃないでしょうか。
しかし北朝鮮、どうするつもりなのか?
何やら第二次世界大戦前の日本にも重なる雰囲気があって、ちょっと落ち着きません。
しかも戦前の日本には「核」も「ミサイル」もありませんでしたからね。
時に原理主義的な行動に出かねない米国の思惑も含め、気になります。
金沢からは日本海を挟んで、「お隣」ですからねぇ!