鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「こんな感じだったなぁ」から...:読書録「うちの子になりなよ」

・うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
著者:古泉智浩
出版:イースト・プレス

うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門

うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門


「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」は好きなラジオ番組で、毎週ポッドキャストで欠かさず聴いてるんだけど、春夏に組まれる「推薦図書」特集。これは結構、危険w。
普段の自分の趣味の範囲じゃ絶対に手に取らないような、「面白本」を、実に楽しそうに、熱心に紹介してくれるので、ついつい買っちゃうんですよねー。
前回の時はなんとか誘惑に負けずに乗り切ったんですが、今回はヤラレちゃいました。
本書はその一冊。


ま、40代のある漫画家が里親になて一年余の経験を語ってるんですが(一部に漫画があります)、里子が赤ちゃんなんで、前半は「育児日記」みたいなん感じになってます。
「育児で大変だったことは忘れちゃうから、次の子供を育てることができる」
って言われますが、同時にその時の「喜び」なんかも一緒に薄れちゃうんですよね(少なくとも僕は)。
作者は本当に里子を育てることを感謝し、喜んでいるんですが、「赤ん坊」の成長がそれを倍増している様子が実によくわかります。そして、
「そうそう、こんな感じだったよー」
と僕の記憶も蘇ってきて、なんだか温かい気持ちになる。
添えられた、味わい深い四コマ漫画も相まって、ハッピーな気分になれるのが前半の育児日記パートです。


後半も実は同じ時期のことを書いてます。
ただこちらのパートでは「里親」という制度について踏み込んだ論述がされ、よく知らなかった「里親制度」というものが肯定的に理解できるようになっています。
と同時に作者、そしてその家族の「子供」というものに対するスタンスも語られていて、彼らが「里親」になる決心をした経緯、「里子」に対する想いのバックボーンなんかにも踏み込んでるんですよね。
この後半部分を読むことで、本書が単なる「育児日記」ではなく、「里親制度」というものを世に知らしめようとする意図があって書かれたものであること(特に「不妊治療」をしているカップルへの、一つの「選択肢」として)が分かります。
すごく読みやすい、でも実に意欲的な作品なんだと思いますよ、実は。不明にして僕は「里親制度」って全然知らなかったですし...。


正直、「う〜ん、これはどうかなぁ」って思うところもありました。でも、作者の親戚のおばさんが、<赤ちゃんを可愛がってくれるだけでなく、よその子どもを預かるなんて本当に素晴らしいと称賛してくださった>ってのはよくわかります。僕もそう思います。
「子どもの貧困」問題は日本でも徐々に広がっていて、時には「親が悪い」「あんな親だからだ」みたいなリアクションも見られますが、子供は親を選べませんからね。
「じゃあ、どうするんだ」
ってことを考えた時、こういう制度があるってことも頭のどこかには置いとくべきなんじゃないでしょうか。


最近、うちの子どもたちもうるさくなってきて、結構言うことを聞かない局面も増えてきています。
ほぼ毎日、FaceTimeで様子は見てるんですが、
「おいおい...」
ってことも少なくありません(こっちはいざとなれば切っちゃえばいいのかもしれませんが、ズッと付き合わなきゃいけない妻はホント大変だと感謝してます)。
でも彼らが生まれて来た時の感謝や、一緒に過ごしてきた日々にあった「喜び」を忘れちゃいけませんね。
ホント、そう思いましたよ。
...それでも、つい怒っちゃうんだけどなぁ〜。