・未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ
著者:リンダ・グラットン 訳:吉田晋治
出版:プレジデント社(Kindle版)
- 作者: リンダ・グラットン,吉田晋治
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2014/08/07
- メディア: 単行本
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「ワーク・シフト」の作者による最新作。
「ワーク・シフト」は「個人」の未来での生き方(2025年だったかな、例示されてたのは)を論じた作品でしたけど、本書は「企業」について論じられています。基本的な問題意識は共通していますね。その上で「明るい未来の可能性」を考えようという。
構成が論理的な上に、翻訳もこなれていて、実に読みやすい本でした。
結構面白かったですよ。
論の対象となるのは「レジリエンス」のあり方です。
「回復力」とか「適応力」「復元力」とか訳されていますが、
「環境が変わる中で、組織や関係がポジションを失わないための性質や力」
という風に僕は読みました。違うかもしんないけどw、僕の問題意識からはこういう見方がマッチするってことですかね。
大きな見方は以下の3つ。
「社内のレジリエンスを高める」
「社内と社外の垣根を取り払う(地域社会との関係)」
「グローバルな問題に立ち向かう」
それぞれの見方の中で、いくつかの「問い」(3つが多いかな)が立てられ、それについて実例を挙げながら回答していくことで論が展開されます。
良くも悪くも「実例」ってとこがポイントでしょうか?
実に豊富な実例が取り上げられているので、具体的で理解しやすい内容になってるのは確かです。
その一方で「実例」だけに、「これって継続性があるのか?」「汎用化できるの?」等々といった疑問も湧きます。
作者自身コメントしていますが、新しい取組みだけに、まだ成果を分析・評価するに至っていないものも少なくありませんからね。
一方で、「結果」を待ってるようじゃ、社会や情勢の変化に耐えられないってのもあって、ここら辺、ドンドン難しくなっています。(ビジョナリーカンパニー」であげられてた企業が…なんて話は、今後フツーに出てくるんじゃないでしょうか)
ま、ここら辺はある程度「みなし」で読むしかないでしょう。
「正解」はない。でも自分にとって役に立つ「意見」や「情報」はあり得る。
僕はそういうスタンスで読みました。
「グローバル」っがらみの話も多いので、「自分にゃあんまり関係ねぇかな」とも思いながら読み始めたんですが、「関係あるなし」は別として、思ってた以上に刺激的だったし、考えさせられました。
先日「LOTUS1-2-3」の製造中止の報道がありましたが、僕が入社した頃はWindowsも使われてなくて、8インチフロッピーで起動してましたからね。
それが今やPC一人一台どころか、スマホやらタブレットやらで、クラウド活用…自分がどういう立ち位置になるかはともかく、ここで論じられてることのような世界が「常識」になる可能性は決して低くないのでは…と。
あんまり「楽」できそうな世界じゃないってのはありますがw。
最後に「今後のリーダーシップ」について論じられていますが、「透明性」と「説明責任」が重要となるって言うのは、ネット社会の進展に伴い、必然的な変革ではあるんでしょう。
ネット活用については、
「そんな風にうまく行かねぇんじゃないかな」
と思うところもあったんですが、こういう「大枠」で思考実験するってのは必要なことだと思います。
柔軟な「予測」を語りながらも、実証的な情報もふんだんに盛り込む。
こういうの、欧米のビジネス書の良質なところです。(全部がそうとは言いませんが)
時間もしっかり掛けてるんでしょうね。
日本のビジネス書だと、あんまりこういうのないなぁ…ってのが、ちょっと寂しい感想でもありました。