鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「クラウドからAIへ」

・クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場
著者:小林雅一
出版:朝日新書(Kindle版)



一年ほど前に本書が出版されたとき、ちょっと気にはなったんですが、
「AI=人工知能の話だと、ちょっと未来話すぎるかなぁ」
と思い、結局手は出しませんでした。
最近、書評でこの本のことを読んで、
「ありゃ。アトムやドラえもんの話じゃないらしいぞ」
ということに気づき、改めて読んでみることに。
正解。
これはすぐ「明日」の話です。



まあ「人工知能」の話ではあります。
ただ今の「AI」ってのは、一昔前のイメージとはずいぶん違うんですね。
「アトム」や「ドラえもん」「HAL」じゃなくて、
「Siri」や「ルンバ」。
イメージで言えばこんな感じです。
ルールや法則をしっかりと築き上げて、「知性」のあり方を科学的に究明した上に技術をくみ上げていくのではなくて(かつての「AI」はことらを目指していました)、
「目標」を定めた上で、効果的にそれを達成できるように統計や確率論、推計を駆使して、中身は「ブラックボックス」だけど「使える」技術として成立させる。
今、世に問われている「AI」はこの後者のほうが主流のようです。
その「技術」はすでに身近にあり、日々進化しているわけです。



もちろん、前者のような「知性のあり方を科学的に究明する」AIの方向性は今もあります。
統計・確立・推論の上に構築された「AI」が一定の成果を挙げてきている今、こうした「科学的解明」の必要性は高まっているのかもしれません。
たとえ効果的でも、「ブラックボックス」はちょっと怖いですからねぇ。そこには「HAL」の影を予感せざるを得ません。



とは言え、「技術」としての「AI」が進化しているのは事実であり、加速度的にそれらは実用化/ブラッシュアップされ、我々の生活の中に組み込まれてきています。
今のところ「Siri」はアプリの起動や、ちょっとしたメールやメモの下書きくらいにしか使ってませんが(そのレベルで十二分に活用できるってことが、驚きでもありますが)、この間のアップルの新しいOSの発表なんかを見ると、次の一歩はもうすぐのようです。「スマートフォン」の日常への食い込み方は相当なものがありますからね。
ソフトバンクがロボット事業に踏み出すのも、ここら辺を見据えてという見方があります。
「ハードよりソフト」「ハードで露出を高めておいて、実際にはソフトのブラッシュアップを狙っている」
「アトム」を作ろうとしてるというよりは、確かにこっちかな、って気がしますよ。



まあ不安もあります。
「自動運転」なんかは「完全化」にはちょっと躊躇せざるを得ません。
しかし「人間が運転するのを高いレベルで補助する」となれば、これは「あり」ですね。そして今の「AI」の方向性はまさにコッチだと思います。



はたしてどのような「未来」がやってくるのか?
それは分かりませんが、今のように急速な速度で「技術」が進展すると、それに対処する動きより先に、生活の「現実」としてその「技術」が定着してしまう方が早くなってしまいます。
その方向性をしっかりと感じるためにも、こういう本は役に立ちますよ。
「労働問題」は、なんとも悩ましいんですけどねぇ・・・。