鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「母なる夜」

・母なる夜
著者:カート・ヴォネガット・ジュニア 訳:飛田茂雄
出版:ハヤカワ文庫(Kindle版)



ハヤカワ文庫の旧作が電子書籍化されはじめて(その基準はよく分からないんですが)、ヴォネガットの作品はまとまって電子化されています。
最近はとんとご無沙汰ですが、一時期は随分と読み漁った作者です。
「改めて読み直してみたいな」
と思ってて、最初に選んだのが本書。



もっとも以前に僕が読んだのは池澤夏樹訳の白水社版だと思うんですがね。従って正確な意味では「読み直し」ではないかもしれません。
とは言え、「何処が違うか」は全く指摘できませんが(笑)



「良作」
なのは間違いないでしょう。
短い章を重ねるスタイルや、諦観に囚われたキャラクター造形など、初期の村上春樹作品への影響が改めて確認できました。(もともと読み始めたキッカケが村上春樹ですし)



一方、昔(高校か大学)より強く感じたのが、
「ロマンチックな話やなぁ」
ということ。
勿論、描かれるのは「悲劇」であり、その裏には「絶望」が色濃く張り付いているのですが、それでもロマンチックな色彩が強く印象に残ります。
こういうのを「ロマンチック」って言っちゃうところが、僕の「汚れちまった悲しみ」なのかもしれませんが(ナンノコッチャ。笑)



本作を書いた時、ヴォネガットは39歳。
「若い」!
と驚くほどの年齢ではありませんが、作家人生の中では前期に書かれた作品(第3作だっけ?)になります。
その人生経験は今の僕(49歳)ですら思いも寄らないものでしょうが、それでもこの「若さ」は作品のイメージに影響しているんじゃないかと思います。
年寄りより若者の方が「センチメンタリズム」を上手く扱うことが出来るってのは、よくあることですから。



見方を変えれば、この後ヴォネガットがどのような変遷を辿ったのか読んでみるのも面白いかもしれません。
電子書籍化された作品はまだまだあります。
ボチボチと読んで行きましょうかね。