鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「素人の顧客の意見は聞くな」

・素人の顧客の意見は聞くな 永江一石のITマーケティング日記
著者:永江一石
出版:KDP



この作者のブログはRSS登録してないんだけど、収められている記事の結構な数は既に読んだことがあるものだった。
それだけリンクなんかで紹介されるケースが多いんだろうね。それだけの人気ブログってこと。


内容的にはITマーケティングやネットビジネス(タイミング的にSNS絡みのものが多かったな)がメインテーマになるモノが多いので、僕自身の興味や仕事とは直接的な接点はあまりないんだけど、プロとしての深い知見は、ネット周りの事象に対する的確な批評に繋がっていて、読んでて参考になる。
書かれた記事の現時点におけるフォローがチャンと書かれてるし、ネット上の参照記事にはリンクも張ってあったりするので、電子書籍としての利点にも目配りしてる内容にもなってる。
興味がない人にまでお勧めするような作品じゃないけど、少しでも引っかかりがある人には一読の価値はあるかと。
100円だしさw。



内容は別として、面白いのは、本書の出版形態。
キンドルの自主出版を使ってるんだけど、本人がやってるんじゃなくて、出版は他の人が代行してるんだよね。
本業が忙しすぎる作者がブログ上で応募したことからこういうスタイルでの出版になったらしいんだけど、これは今後あり得るスタイルだよなぁと。
少なくともプロが書いているブログの書籍は、本人が出版せずとも、こんな風に手早く書籍か出来るって言う実例となってる。もともと質の高いブログにはファンも多いだろうから、買って出る人は必ず要るんじゃないかね。
(一方でそういう仲介が「ビジネス」になるか、というと、個人的には「?」。そこまでの広がりはないと思うので)



一方で「編集者の存在」ってのも考えさせられた。(ここらへんは「イノベーションの本棚」を読んだときにも思ったこと)
本書の記事はどれも水準が高いんだけど、それだけに読む側に一定の知識水準を要求する部分もある。
作者に言わせれば「分かんないところは自分で調べるべき」ってとこだろうし(情弱に関する主張にも通じる)、そりゃそうだろうと思う。
でもその水準の高さが間口の狭さに繋がっているのも事実であり、読者層を固定した層から広げようと思う場合には、第三者的視線を入れた方が良いということはあるのかもしれない。
「編集者」の必要性ってのは、そこら辺にあるんじゃないかね。
(ま、本書はそういうことを求めてる作品じゃないけど)
ディスカヴァー21あたりはそういうトコロを点いてるように思うけど、さてさてそこで「出版社」という組織がどこまで求められるか、ってのはあるかな?
質の高い「編集者」を要請する組織としての意義はあるかもしれないけど。



僕としては面白い作品が手軽に読めるこういう流れはありがたいけどねぇ。
でもそんなことより「本を読む層を増やさないと、紙の書籍だろうが、電子書籍だろうが、未来は暗い」って作者の主張の方にギクッとした。
たしかにKindleもコミックばっかり増えてるような気が・・・。
青空文庫の活用は勿論だけど、「安価な電子書籍の販売」。
これが出版界の未来のためにはヤッパリ必要です。
音楽業界見てりゃ、分かるだろうになぁ・・・。