鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「京都」と言う土地が呼び込む不思議:読書録「八月の御所グラウンド」

・八月の御所グラウンド
著者:万城目学 ナレーター:高坂篤志
出版:文藝春秋(audible版)

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直木賞を受賞したことはもちろん知ってたんですが、手に取るきっかけは父の七回忌で会った妹が薦めてたから。
調べたら早々にaudibleになってたってのもありますw。


万城目さんの作品は「鴨川ホルモー」と「プリンセス・トヨトミ」くらいかな、読んだことがあるのは。
印象はあまり強くない。
でもこの話はものすごく面白かったです。
関西で生活するようになって、「京都」が身近になってる…ってのも大きいかも。


女子全国駅伝でピンチランナーとして出場した絶望的に方向音痴な女子高生が出会う<ライバル>と<不思議>
彼女に振られた大学生が、借金の返済のため、御所グラウンドで開催される草野球大会に参加する羽目になり、そこで<烈女>中国人留学生と一緒に探るメンバーの<不思議>


「京都」という歴史の積み重ねのある土地で、「青春」と言う時間を過ごす主人公たちが、時代を超えて別の「青春」の残滓とすれ違い、触れ合う<不思議>の物語。
…そんな感じでしょうか?


個人的には「女子駅伝」の話の方が好きかな。
この<距離感>がいい。
「御所グラウンド」の方は、すごくいい話なんだけど、少し「語り過ぎ」な気もする。
ラストの大文字焼きのシーンは、もっと抑えた方が…
って、同じような題材の「シューレス・ジョー」(フィールド・オブ・ドリーム)なんかに比べたら、それでも随分「抑えて」るんですけどねw。
ラストの切り方は僕は「正解」と思います。


「京都」との距離感によっては、ちょっとその「特別さ」が鼻につくかも知れませんw。
ここら辺はなんとも言い難いところ。
僕は好きですね。
京都の町屋の間を歩き回ってると、ふっと感覚が遠のくようなところもあって、その雰囲気にこの作品は重なるところがあるようにも感じます。
その感覚は「京都人」のものではなくて、「旅人」の感覚でもあるんですが…。


良くできた作品です。
他の万城目学作品も読んでみた方がいいかな?