鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

紫式部をどう絡めてくるのかな?:読書録「道長ものがたり」

・道長ものがたり 「我が世の望月」とは何だったのかー
著者:山本淳子
出版:朝日選書

f:id:aso4045:20240114072640j:image

 

今年の大河ドラマ(「光る君へ」)のアンチョコ本としてw。
「便乗本」…ですが、作者は「源氏物語」の研究者で、本書も「大鏡」「栄花物語」のほか、一級資料にも多く言及しながら、「藤原道長」の人生を再構築しています。

「光る君へ」のアンチョコ本としては冲方丁さんの「はなとゆめ」(清少納言)、「月と日の后」(中宮彰子)で宮中の女性から見た藤原道長を中心とした権力闘争の有様は読ませてもらているのですが、振り返って「藤原道長」自身に焦点を当ててこの時代のフォローをしたほうがいいかな…と思ってのチョイスです。
https://note.com/suzumaro/n/n212fee722697
https://note.com/suzumaro/n/n0d72d6a8c61d

 

 

道長の人生は、父親である「藤原兼家」の後継者対策の失敗に端を発していると言っても良さそうです。
兼家自身は、娘を天皇の妃とし(詮子)、その息子(一条天皇)の外戚として栄華を極めます。
…が、詮子を「中宮」にできなかったこと、後継者としての道隆を狙う息子(道兼・道長)の力を十分に削いでいなかったことが禍根となるわけです。

 

まあ、息子の道隆も娘(定子)を妃とし、手練を使って「中宮」にもしているし、息子も産ませている。
一条天皇の中宮定子への寵愛が道長にとってのハードルになるわけですから、やるべきことはやってはいる訳ですが、自分自身の人生が短命に終わったこと(そのため孫を天皇に即させれず、息子への後継対策も十分ではなかった)、妹の詮子が道長と強い絆を持ち、一条天皇対策において道長の後押しをしたこと…あたりが「読み違い」でしたかね。

 

逆に言えば道長の方は<ラッキー>(幸い)が続いている。
道隆の死もそうですが、タッグを組んで道隆と対抗しようとしていた道兼もすぐに死んだことは大きかった。
その後、道隆の息子・伊周と隆家が「長徳の変」で自滅してライバルの座から失墜すると、貴族には対抗者はいなくなり、その後の道長の戦略は対・天皇に向けたものが中心になります。
娘の彰子を宮中に入れ、「中宮」とすること
一条天皇を退位させ、孫を天皇に即位させること
一条天皇との戦いにおいては「中宮定子」の存在がキーとなり、一条天皇退位後は三条天皇が障害となる
…が、まあそれらを乗り越えたことが「藤原道長」を平安時代きっての<絶対的権力者>に押し上げる訳です。

 


大河では紫式部がヒロインとなって、この道長の権力への道を見ていくようですが、史実としては道長のパートナーとしては「源倫子」が相当な役割を果たしたようです。
大河では「黒木華」さんですね。
後押しした「藤原詮子」は「吉田羊」さん。
「月と日の后」での怨念の吐きっぷりはすごかったですがw、あれをやるのかな?吉田羊だからな〜。
最後の一手を担った存在で「中宮彰子」には「見上愛」さん。
担がれる籠だけにとどまらなかった彰子をどう描くか?
「紫式部」が影響を与えた人物でもあると考えられます。

 

 

歴史の「表」を見ると、道長の権力闘争において紫式部が果たした役割は
「中宮定子に対抗するため、中宮彰子に箔をつけ、彼女を教育する」
と言うところにあったように思います。
重要ではあるけど、一つのパートでしかない。


これをどこまで広げ、深めるのか?
今回の大河の見せ所はそこかな?


そのきっかけが、第一回放送での「藤原道兼」の狂気。
…本書では道長は道兼と手を結んでたようなんですけどw。
さてさて、どうなりますか。
出足としては楽しめそうな大河にはなっています。

 

#読書感想文

#道長ものがたり

#山本淳子

#光る君へ