鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「枕草子」をノー天気本と思っちゃあかんな:読書録「はなとゆめ」

・はなとゆめ

著者:冲方丁 ナレーター:下田レイ

出版:角川文庫(audible版)

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「枕草子」(清少納言)には苦手意識(というか、「合わない」って感覚)を持ってるんですが、本書を読むと、

「色々背景はあるんやなぁ」

って気分になりました。

 


「天地明察」「光圀伝」「マルドゥック・スクランブル」の冲方丁が、「枕草子」をベースにしながら、清少納言そして中宮定子の人生を描き直した作品です。

「冲方さんが<枕草子>?」

と違和感もあったんですが、読んで(聴いて)納得。

ここにも<信念>を持って時代に対峙した人物が登場します。

 


まあ、「中宮定子」の人生というのはナカナカ厳しいものがあって、それに寄り添った清少納言の人生、その結実としての「枕草子」がノー天気一本ってことは、ありえないっちゃあ、ありえない。

 


990年 中宮定子入内(14歳)

993年頃 清少納言、定子のお付きに

995年 藤原道隆逝去(定子の父)

996年 長徳の変(兄・藤原伊周失脚)。定子、落飾(出家)

997年 女子出産

998年 伊周、赦免。定子、宮中に戻る(貴族の反感を買う)。

999年 男子出産(敦康親王)。彰子、入内(12歳)

1000年 定子、皇后宮に。(彰子が中宮に)

女子、出産時に死去。

 


「枕草子」の正確な成立年は不明なようですが、本書では「長徳の変」以降に書かれ始め、定子の死後、清少納言が宮中を去ったのちにまとまった…としています。

つまり<中宮定子>にとっては後ろ盾がなくなり、藤原道長の権勢に押されて没落していく過程の時代であり、その時代に清少納言は輝かしい定子とその家族、取り巻きたちの姿を描いたことになります。

 


紫式部の批判は「そんな時代に、こんな軽薄な」ってことにあるのかもしれませんが、その「輝かしさ」を止めることこそが、清少納言の意図であったのだと。

その意図が成功したからこそ、紫式部は批判を加えざるを得なかったわけです。

(清少納言が定子に仕えた時期と、紫式部が彰子に仕えた時期はズレています(紫式部がお付きになったのは1006年頃))

「中宮定子の頃の女御たちは華やかで、機転も効いて良かった」

という評判への反発ですが、その「評判」そのものが<枕草子>が作り出したものだとすれば、権力に押し潰された中宮定子の一生が清少納言の筆によって、一矢報いたのだ、と。

…冲方さんの「見立て」はこうなんじゃないかと思います。

そう思うと、「枕草子」や清少納言を「浅薄」と断じるのは…と反省せざるをえません。

まあ、感覚的に合わないってのは仕方ないかもしれませんがw。

 


中宮定子・彰子は「ライバル」と称されますが、実際にはそんなことはなく(入内した時期からも)、むしろ定子の息子・敦康親王を巡って、彰子は父・道長と対立するはずです。

権勢を極めた藤原道長に対抗する中宮彰子。

そこには朝廷政治における女性の在り方が影を落としていますし、その中で自分の生き方を定めた定子・彰子の覚悟も垣間見えます。

冲方さんはそれも書かれているはず。(「月と日の后」)

ここら辺の話が「大河ドラマ」でも描かれるとしたら、これはこれでナカナカ興味深いドラマになるような気もします。

あんまり期待しすぎても、何だけど…。

 


さてさて、「月と日の后」、いつ読むかなぁ。

年末年始?

大河ドラマが近づいた頃の方がいいかしらん?

 


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