鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

志は高い本だし、岡田さんのスタンスは買います:読書録「教室を生きのびる政治学」

・教室を生きのびる政治学

著者:岡田憲治

出版:晶文社

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「なぜリベラルは敗け続けるのか?」「政治学者、PTA会長になる」の岡田憲治さんの最新作。

バリバリ「リベラル」の岡田さんですが、立憲のテイタラクに悩んで書いたと思われる「なぜリベラルは〜」では「リベラル」の課題について論じ、「PTA会長になる」では、自分が主体的に関与したPTA活動の中から、組織活動の現状や課題について具体的に論じています。

自分の専門である「政治学」を実地で活用してみる…って視点ですかね。

そして本書では「中高生」向けに、彼らが直面しているため<現実>(教室)において「政治学」がどう当てはまっていくのかを語り、机上の「政治学」を地べたで活用するように翻訳しようとされています。

なかなかハードル高いし、それだけの労作とは思いますよ。

 


<「立派な人にならなければいけない」と縛られ、

「友だちがいないのは自分が悪い」と不安を抱え、

「自分をもっとちゃんと肯定しよう」と思えず、

「ぼんやりと人の言うことを聞く」ことを繰り返し、

「高校生らしい生活」なんて言われて白けて、

「みんなで決めた」のにそんな気にもなれずに、

「どうして話し合い続ける」のかもよくわからず、

「民主主義は多数決だ」と思い込んで、

「言えないし、聞けないし、書けない」と引きこもって、

「意見の対立や批判」を怖がって、怯えて、喧嘩して、

「リーダーだから上の人」と勘違いして、

「苦労を分かち合うことが平等」と狭くして、

「ボランティアとは一人一役だ」と善意で押し付け、

「偏見の実感がないから」と高を括って、

「無理強いされている自分を自己責任」と下げて、

「何回負けてもやり直せる民主主義」に気づかず、

「もういろいろできていること」に想いが及ばず、

「無理して学校や会社に命をかけて」行って壊れかけて、

 


でもついに、「自分で賢く決めて、上手くいかないことを受け入れて、オレ・ワタシのやったことを人のせいにはできないからと腹を括る」ところまで到達できるのだ。

(中略)

僕と君たちは、立派な人になるためではなく、楽しく暮らすために生きているし、生きていたいと思っている。そのためには政治と民主主義が必要だ。>

 


ただ個人的には、

「これって、<中高生向け>?」

ってのはあります。

今、東大生のゼミを書籍にした作品をパラパラ読んでるんですが(「東大生、教育格差を学ぶ」)、あそこに出てくる学生なら大丈夫かな?

でもそういう人たちだけを読者にしたいわけじゃないでしょう?

「こう言うのが理解できる人だけついてくればいい」

…ってのをやめようってのが「なぜリベラルは〜」だったし、「PTA会長になる」でも多様な人々との意思疎通というのはテーマの一つだったはず。

確かに「舞台設定」を<教室>にして、具体的なテーマをそこで起きる<ありそうなこと>からピックアップしてきているから、全く「馴染み」がない話ではないと思うけど、決して「分かりやすい」話にはなってないんじゃないかと思います。

話っぷり、というよりは、本としての「スタイル」かなぁ。

<言葉>で論理を展開させていくってのは<政治>においては重要なんだけど、想定する読者を考えたら、もっと<図>とか入れて論理展開を分かりやすく整理したほうがいいんじゃないかなと思った次第。

もちろんそうすると「こぼれ落ちる」ものはあるとは思いますよ。

でも「最初のハードル」を越えるためにはそれもやむなし、でしょう。

 


個人的には「ひろゆき」(作中では「ともゆき」とか言ってるw)を揶揄してるとこも引っ掛かりました。

言ってることはわかるし、ここら辺重要なことでもあると思うんですが、こういう言いっぷりをすると、「ひろゆき」を面白いと思ってる人は「カチン」と来ちゃうんじゃない、と。

だって「上から目線」だもん。

そしたらその人はもう読まなくなっちゃうでしょう。

別にこんな揶揄をしなくても主張はできるはず。

…とすれば、なんのために「読者」(味方)を減らすようなことをワザワザ言わなきゃいけないのか?

右派左派問わず、こういうパターン、最近多いですけどねw。

 


志は買うし、言ってることも重要なことだと思う。

でも本当の目的を達することができるかどうかについては、疑問。

…ってのが僕の感想でしょうか。

「いや、そんなことないよ。中高生にバンバン読まれて、ベストセラー間近ですよ」

そうだったら、ゴメンナサイ、ですけど。

 

 

 

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