・欺瞞 勘定侍 柳生真剣勝負<六>
著者:上田秀人
出版:小学館時代小説文庫
時代小説で「柳生宗矩」の評価にはバラツキがあります。
「柳生武芸帳」を書いた五味康祐さんの評価はスゴく高かった覚えがあります。
山田風太郎さんの場合は「魔界転生」で十兵衛と闘いたくて魔界に堕ちたんだから、それなりの実力は…。もっとも勝てませんでしたがw。
「柳生一族の陰謀」の宗矩は「剣豪」というより「陰謀家」の方が強いかな?
史実はどうか…ってのは何とも言えませんが、石舟斎が印可を宗矩じゃなくて兵庫助に継がせたあたりをどう評価するか。
これも深謀遠慮…って話もありますからねぇw。
本作の宗矩は「剣豪」「武将」としてはそれなり。でも剣豪としては十兵衛に落ちます。
「政治家」「陰謀家」としては、総目付を務め上げただけのことはある一方で、時代が貨幣経済に移りつつあることを理解できず(ここが主人公との軋轢になります)、家光・幕閣の意向を読みきれないあたり、そこまで優秀であるとも読めません。(宗冬が「粗忽者」なのでw、そこまで悪くは見えないけど)
ほどほどの「悪役」かなぁ、今のところ。
そういう輩の方が厄介だったりもするんですけど。
柳生十兵衛については、フィクション界のヒーロー像に合致するキャラになってるんじゃないでしょうか。
主人公のこともちゃんと評価してますしね。
今のところ主人公の味方になってますが、これが敵に回ると厳しくなるなぁ…というのが6巻を読んでの感想。
上田作品の場合、敵味方の立場がコロッと変わるってのも珍しくないからなぁ。
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