鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「デカい」と言われた清原。でも本書に収められた写真を見ると、少年らしいあどけなさが目につきます。:読書録「清原和博への告白」

・清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実

著者:鈴木忠平

出版:文春文庫(Kindle版)

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清原和博が甲子園で放った13本の本塁打。

その本塁打を「打たれた」側に焦点を当て、当時から現在までを追った作品。

 


元になった記事が「Number」に掲載されて、それが元で作者と清原の接点ができ、インタビュー本が出版され、最新作品「虚空の人」につながります。

(本書には清原からの「返答」があり、解説には元PL監督の中村監督の文章がまとまっています)

 


内容的には「虚空の人」と対になる作品でしょうね。

僕が読んだのは逆になっちゃいましたがw。

 


本書で語ってくれる「打たれた」人たちは、一様に「清原和博」に決定的なインパクトを受け、それが(良くも悪くも)その後の人生にまで影響を与えている。

そこに見える「清原和博」は<仰ぎ見るヒーロー>であり、<天真爛漫な高校生>であり、<真っ向勝負を愛するロマンチスト>であり、<気配りの細やかな繊細な少年>でもある。

覚醒剤事件の後に、こういう<輝かしい少年>であった「清原和博」を読む者の(その中には清原自身も含まれる)記憶の中から蘇らせたのが本書であり、その<輝かしい少年>の裏にあり、彼が<闇>に取り込まれるようになった背景を追いかけたのが「虚空の人」と言えるのではないかでしょうか。

 


<輝かしい少年>である「清原和博」は、本書ではまあ、狂言回しのようなもの。

本当に描かれているのは「打たれた人」たちの<人生>です。

決して「安泰」ばかりでなく、「栄光」に包まれているわけでもないその<人生>に「清原和博」という存在はどういう意味を持っていたのか。

…正直、何度か涙ぐんじゃいました。

なんなんだろうなぁ、こういうの。

 


読んでて、P Lを含め野球部にある理不尽な体罰的な風習には気分も悪くなりました。

もう最近、僕は高校野球を見てないし、春・夏の甲子園についてはネガティブな意見しか持ってないんですが、その根本にはこういうところがあるんだな、と改めて思ったりして。

トレーニングには意味があると思うけど、上下関係の理不尽だけど制度化されたイジメ・体罰。

全く意味が見出せない。

 


それでも振り返って、あの頃のPL学園を中心とした高校野球を懐かしく思う気持ちは僕の中にあって、本書はそれを刺激しもしました。

そこはまた僕が抱える理不尽なところなのかもしれません。

 


作品としての完成度は「虚空の人」より上じゃないかしらん。

好著です。

 

 

 

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