鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

本書を読んで、ちょっと「清原和博」が好きになりました:読書録「虚空の人」

・虚空の人 清原和博を巡る旅

著者:鈴木忠平

出版:文藝春秋(Kindle版)

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無茶苦茶面白かった「嫌われた監督」の作者の新作。

覚醒剤に手をつけ、逮捕・有罪判決(執行猶予付き)を受けた清原さんのインタビュー本(「告白」「薬物依存症」)をまとめた作者が、「清原和博」とはどういう人物なのか…を追いかけ、思索した作品です。

 


「お〜、『嫌われた監督』の作者か〜」

と出版を知って予約を入れ、先立つ作品(「清原和博への告白」)も事前に購入してたんですが…。

結局、インタビュー本も「清原和博への告白」も読まずに、発売日を迎えてしまいました。

いやぁ、実はあんまり好きじゃないんですよね、清原w。

 


清原さんは「1967年生まれ」ですから、65年生まれの僕にとっては同世代。

もちろんKKコンビが活躍したPL時代の甲子園の記憶は強く残っています。(池田高校ファンだったんで、敵役で登場したんですがw)

3年の夏の優勝は本当に劇的だった。

あのドラフトには心揺さぶられた。

日本シリーズの涙には感動した。

…って位までは「ファン」とは言わないにしても、「好きな選手」ではありました。

それが日本球界を代表する選手となり、「番長」とか呼ばれるキャラを身にまとうようになり…

巨人に移籍するころは「嫌いな選手」のポジションにド〜ンと収まっていましたw。

まあ、マッチョな体育会系のニイチャンって、嫌いなんですよ。基本的に。

(そういう意味では桑原真澄の方が一貫して好ましい選手でした。それはそれでヒネクレモンかなw)

 


本書では「番長キャラ」として逮捕前まで打ち出していた<清原和博>の「弱さ」と「優柔不断さ」そして「危うさ」が延々と描かれています。

執行猶予中の腰の定まらない姿を追いかけつつ、幼少時代、PL時代を中心に振り返っていくことで、「繊細で、優柔不断で、でも愛される少年」としての<清原和博>の姿が浮き上がってきます。

そして、その少年があの「ドラフト」で決定的に傷付けられる経緯が…。

「30年も前のことで、しかもコレだけの実績を積んできているのに…」

でもそうとしか考えられないほど、ここで描かれる<清原和博>は弱く、危うく、幼い。

「番長」なんか、どこにもいません。

 


あの「ドラフト」の裏に何があったのか。

本書を読んでもそれは分かりません。

作者は「桑田真澄の陰謀説」には否定的。

複数球団の指名が決定的で(実際そうだった)、「巨人」への入団が確定されてはいなかった。

早稲田進学を希望していた桑田が、(実際に早稲田野球部の試合を見て)迷いを生じていた

KKを巡っては魑魅魍魎のように多くの人間が群がっていた

「巨人」にとって実力とスター性のある選手の獲得は至上命題であった

…まあ、何が決定的だったのかはなんとも…

 


ただ本書で描かれる<清原和博>に比べて、<桑田真澄>はずっと大人であり、才能もあり、超人的な努力も厭わない「天才」に見えます。

それは見る人には見えていたのかもしれないな…とも。

(その「天才」も、このドラフトによって決定的に傷付けられてしまっていることが、もう一つの悲劇でもあると感じます)

 


でも本書を読んで、僕は清原がちょっと好きになりました。

YouTubeとかで色々頑張ってるようだけど、時々炎上なんかもして、一方でこうやって人が集まってくることで<清原和博>の繊細なコアの部分が傷ついていくのじゃないか

もしかしたらまた「闇」が彼を捉えてしまう時が来てしまうのではないか

…そういう<危うさ>を含めて、本書が見せてくれた<清原和博>の姿は僕には好ましいものに見えました。

「番長」なんかよりもずっと。

 


「嫌われた監督」に比べると、本書は作者自身が強く出過ぎていて、ノンフィクションとしては緩すぎるかもしれません。

でも今の<清原和博>を描くには、コレしかないような気もします。

スッキリはしない。

でもそういうもんだよね、とも思う。

もやもやしたものを感じつつ、一気に読み終えてしまいました。

なんか、今ももやもやしてるんだけどね〜。

 


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