鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読み応え、見応えのある作品。こういう作品が出来ちゃうことに、ちょっとした寂しさも感じたりするけど:読書録「細野晴臣と彼らの時代」、映画評「NO SMOKING」

・細野晴臣と彼らの時代

著者:門間雄介

出版:文芸春秋(Kindle版)

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山下達郎のニューアルバム発売・BRUTUS特集、吉田拓郎の引退、坂本龍一のガン闘病etc…みたいな流れがあって、以前からちょっと気になってた細野さんの伝記本&ドキュメンタリーを日曜日に見ました。

一気でしたねw。

 


本の方はご本人や周りの方へのインタビュー、各種資料からの引用等、非常に丁寧な仕事で、デビュー前から、

はっぴいえんど、キャラメル・ママ/ティン・パン・アレー、トロピカル3部作、YMO、歌謡曲制作、環境音楽制作、隠遁、復活

…と、細野晴臣さんの音楽キャリアを、周りの動きも絡めつつ、フォローしています。

「音楽<ビジネス>」という点では決してメジャーではなかった細野さんが、「音楽<活動>」という観点からは非常に大きな足跡を残し、影響を与えていることがよくわかる内容になっています。

 


僕個人としては、細野さんの「音楽観」と「バンド観」が興味深かったです。

この点は「はっぴいえんど」「ティン・パン・アレー」「YMO」時代のパートで深く言及されています。

それぞれの時代に、細野さんと対比するメンバーがピックアップされていて、それが

 


大瀧詠一(はっぴいえんど)

松任谷正隆(ティン・パン・アレー)

坂本龍一(YMO)。

 


それぞれのバンドの終焉は決定的な決裂ではないものの(一番軋轢があったのは教授との間)、その<思うところ>の差はナカナカ興味深いです。

一言で言うと、

「大瀧・松任谷・坂本が<バンド>というものに何らかの<重み>を持っていたのに対して、細野晴臣は<音楽>を見つめていた」

って感じかしらん。

もちろん細野さんは細野さんで<バンド>のことは大切にしてたんですけどね。

だからこそそれぞれのバンドが崩壊した後も、彼らの関係性は継続し、時に再演を重ねたりもしたってのもあります。

 


でもね。

大瀧さんとは、あり得た<再演>の時は本当の意味では来なかったのかもしれません。

それだけ二人の関係性は深かったんだろうなぁ。

大瀧さんが亡くなった頃のくだり。

 


<細野は大滝が亡くなってから、あらためて彼の存在の大きさに気づくようになった。

たとえば『 Heavenly Music』ができあがったとき、もし大滝がこれを聴いたらどう思うだろうかと、細野は気掛かりに感じた。そうやって彼が自分の音楽をどう感じるかと考えながら、これまで曲を作ってきたことに細野は気づいた。

だが大滝もまた同じようなことを思っていたのだと、細野は二〇一七年の終わりに山下達郎と星野源と鼎談をおこなった際に山下から聞いた。〈大瀧さんとは 1973年から 40年くらい付き合ったけど、彼の作ってるものはほとんど全部、細野さんに向けて発信されてますから。これを細野さんが聴いたらどう思うかって〉(『 YELLOW MAGAZINE 2017-2018』)>

 


<大滝は細野の最大の理解者のひとりだった。そのような人物を失った喪失感は細野にとって実に大きなものだった。けれども細野は彼のために曲を作り、それによって彼との関係を締めくくろうとはしなかった。

「ああ、いなくなっちゃったなと思うけど、生きてるときとなんら変わらない気もするんだよね。ただ疎遠なだけで。ずっとどこかにいる感じがするから。だからまとめようとすることはないんだ。まとめちゃうとそこで終わっちゃうからね」>

 


なんか、ちょっと泣けちゃった。

 


(BRUTUSのインタビューで、「4、5年前、初めてちゃんと話すことができた」みたいなことを細野さんは言ってたけど、その通りで、本書では山下達郎さんの登場はあまりないです。

でも大瀧さんのこのエピソードとか、高橋幸宏を坂本龍一を引き合わせたのが山下さんだとか、要所で顔を出してるんですよね)

 

 

 

今回、この本を読みながら、該当する細野作品をチョコチョコ聴いたんですが、僕自身、結構誤解してたなぁと思うところが少なからず。

まあ、基本的にミーハーなんでw、趣味を突き詰めるような細野作品にそこまで入れ込まなかったってのはあります。

YMOも面白がってたけど、そこまでのめり込みはしなかったからなぁ。

なんで、改めて、

「すげぇやん」

って感じにもなってます。(遅いってw)

 


「NO SMOKING」の方は、この流れを映像で見れるところが良かったです。

駆け足だし、映画の方だけ見てたら「?」ってとこもあったかもしれないけど、本と合わせて見るとよく分かります。

イギリスのライブでの教授の登場とか、そこでの<多幸感>は、最初のYMO時代の軋轢を踏まえると、本当に「良かったな〜」って感じしますしね。

 

 

 

昔話ですからね。

好きな人が読めばいい/見ればいいって作品。

でも、好きな人にはたまらないかもなぁ。

こういう作品がまとめられるようになったってのは、それはそれで寂しいことなのかもしれないけどね。

 


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