鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

もっと色んな人の話も聞いてみたいなぁ:読書録「ザ・ソングライターズ」

・ザ・ソングライターズ

著者:佐野元春

出版:スイッチ・パブリッシング

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2009年から2012年にかけて行われた立教大学での講義、それを放映したNHKの番組をベースにしたインタビュー集。

この番組このことはもちろん知ってたんですが、僕は見てないんですよね。

ちょうど佐野元春もアルバムの発表が途絶えてた時期で(07年の『COYOTE」の後は、13年の「ZOOEY」になります)、僕自身の「佐野元春」への興味が低かった時期に当たるってのもあったと思いますし、「やっぱミュージシャンは、演奏聞かなきゃ」ってのもあったんですよね。

本書を読んで、

「いや〜、見りゃ良かった〜」

と後悔しきり…ですがw。

 

 

 

<この講義では日本で活躍するソングライターたちを招き、音楽における言葉ーすなわち“歌詞“について対話を行ってきました。講義には毎回、音楽や文学に興味のある学生たちが参加し、彼らと共にソングライティングというものを探求してきました。>(佐野元春)

 


総勢24人へのインタビュー。

僕の個人的感覚ですと、こんなグルーピング。

 


①佐野元春の先輩ミュージシャン

小田和正、さだまさし、松本隆、矢野顕子、鈴木慶一(ムーンライダーズ)、なかにし礼、大瀧詠一

 


②後輩でCDが売れまくった80年代・90年代のシーンを知っているメンバー

スガシカオ、KJ(Dragon Ash)、桜井和寿(ミスチル)、トータス松本(ウルフルズ)、山崎まさよし

 


③日本のミュージックシーンの停滞期(衰退期)に活躍する後輩たち

後藤正文(Asian Kung-Fu Generation)、岸田繁(くるり)、山口一郎(サカナクション)、山口隆(サンボマスター)、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)、キリンジ、七尾旅人、中村一義、大木伸夫(ACIDMAN)、星野源

 


④ヒップホップシーンを率いる後輩

RHYMESTER、KREVA

 


Apple Musicで佐野さんが選詞した曲を聴きながら、じっくり読ませてもらいました。

作ったプレイリストはこちら。

https://music.apple.com/jp/playlist/the-songwriters/pl.u-K42vIRY0eG

 


全てのミュージシャンをカバーしてる訳もないので、「あの人は?」ってのがあるのは当然ですが、特徴的なのは「同年代」が抜けてるとこですかね。

特に同い年の「桑田佳祐(サザンオールスターズ)」がいないのは、ちょっと残念。(長渕剛、松山千春も同じくらいかな)

まあ、ライバルというか、同輩というか、ちょっと気恥ずかしいってのはありますかね。

あと「②」「③」に入る<宇多田ヒカル><椎名林檎><ドリカム>あたりは「ソングライティング」っていう意味で、話を聞いて欲しかったかも。

「作詞」中心という視点では外れるのは分かるけど、日本のポップを概覧するという観点からは、「小室哲哉」「つんく」あたりが入ってても面白かったと思います。

 


<言葉で訴える>という観点からも、世界の音楽シーンの趨勢からも「ヒップホップをどう考えるのか」ってのは外せない視点ですが(今はなおさらに)、「VISITOR」を送り出した佐野さんは当然として、何人かのミュージシャンがそこに言及してるのも興味深かったです。

その代表として「RHYMSTER」は、日本のヒップホップの黎明期から牽引してきたという意識が強いだけに、そこらへんにも意識的で、なかなか面白い話を聞かせてくれます。

一方で「KREVA」の方は、そのシーンの中心にいて、ヒップホップ文化にどっぷりな分、スタイルや技術が優先する感じで、ちょっと話の広がりには欠けた感じもしました。(僕は「KREVA」は好きです)

 


講義にあたっては佐野さんは相手の作品をほぼ全部事前に聞いてたようです。

その熱意たるや…だけど、そんなことしてるから、アルバム出せんかったんちゃうの?w。

 


講義・番組終了から10年。

日本のポップシーンも、世界の音楽情勢も大きく変わっています。

例えば、米津玄師、YOASOBI、back number、優里、King Nu、藤井風、Official髭男dism、あたりの話を、このタイミングで佐野さんに聞いてほしいような気がします。

(星野源なんかも、10年前とはずいぶん違う話が聞けるんじゃないかな)

 


…とはいえ、佐野さんご自身が今は精力的にバンド活動をしておられ、ソングライティングに対する意欲も旺盛な様子。

まあ、そこに水を差されちゃたまらないので、その希望は声にしないままにしておくのが良いんでしょうね。

ちょっと残念なんですけど。

 


#読書感想文

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#佐野元春