鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

懐古的だけど、古びてない:映画評「浅草キッド」

劇団ひとり脚本&監督、大泉洋・柳楽優弥主演のNetflixオリジナル。

ビートたけしの「浅草キッド」を原作に、たけしと師匠・深見千三郎の関係を軸に、たけしの修行時代から世に出るまでを描いています。

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…ってまあ、ここら辺は僕らの世代だと「聞いたことのある話」。

「今更それを映画化して…」

って気分はあったんですが、あまりに評判がいいので、つい観てしまい…

 


いや、これはいい映画です。

「浅草芸人」の話なんで、当然「懐古的」な色調はあるんですが、「映画」としてはチャンと新しいものになっている。

70年代でこの題材だと、「男と女のドロドロ」とか、「芸人の僻みやいじめ」とか、「アルコールに溺れた情けなさや人間関係の破綻」とかが取り上げられそうですが、そこら辺はスパッと切ってます。(仄めかしはあるけど)

「そこが物足りない」

ってのもあり得るとは思いますが、「<今>やるんなら、こうだろう」って思い切りが製作者サイドにあるんじゃないかと。

そのことで作品としてのテーマ性がクッキリと浮き上がっているってのもあると思います。

劇団ひとり

やるなぁ。

 


<以下、ネタバレを含みます。観る予定がある方は、観た後にお読みください>

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感心したのは脚本・演出の「キレ」の良さです。

物語の展開上、大きな契機は

・たけしがフランス座を出ていくこと決心する

・テレビ出演で<新しい漫才>を打ち出し、成功へのキッカケを手にする

ってところなんですが、いずれも非常に印象的なシーンに仕上がっています。

それでいて、そのシーンでは、説明的なセリフはなし。

絵面とだけの演出で、グッと迫ってくる。

これはナカナカのモンです。

たけしと師匠の「再会」のシーンも良かったなぁ。

二人が大切にしているものが重なり合って、そこに醸し出される多幸感に観てる僕も酔わされるようでした。

 


それだけにチョット残念だったのは、「再会後」以降の展開。

ここは少し「説明的過ぎる」印象が僕にはありました。

確かに「言いたい」のは分かるし、実際、泣かされもします。

…なんだけど、前半の「キレ」から考えると、もっとここはシャープに演れたんじゃないか…と。

いや、泣いといて何言ってんねん…なんだけどw。

 


「現代」パートで柳楽優弥さんは特殊メイクで「ビートたけし」に扮します。

この「リアルさ」は驚くべきだし、ここまで再現できてるからこそ、この作品は成立しているとも言えるでしょう。

そういう意味でも<今>だから作れた作品でもありますね。

 


いやぁ、劇団ひとり。

ほんと大したもんですわ。

 


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