・Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章<上・下>
著者:ルドガー・ブレグマン 訳:野中香方子
出版:文藝春秋
最近、チョット評判になってる作品。
1週間くらいかけて読みました。
難しいわけでも、面白くないわけでもないんですけど、色々考えながら読んでたもので。
ユヴァル・ノア・ハラリは、人類を人類たらしめてるものは「虚構(フィクション)」であると言っています。
本書の作者もその認識は共通してるのでしょう。
その上で、
・惑星A:お互いが協力し合い、たとえ相手が見ず知らずの他人であっても、危機に直面すると、自分の命を犠牲にしてでも他人を助けようとする。
・惑星B:誰もが自分のことしか考えず、危機に直面するとパニックが起きて、他人を押し退けて自分だけが助かろうとする。
「惑星A」「惑星B」どちらに我々は住んでいるのか…というフィクションを受け入れればいいのか。
…と作者は問いかけてきます。
今、我々を支配するのは「人類は惑星Bの住人である」という思想(フィクション)ですが、その根拠はどこまで確からしいのか。
そもそもそれで人類は幸せなのだろうか…と。
人類がそもそもは「惑星Aの住人」であったこと(狩猟民族時代の証拠)
「惑星Bの住人」であることを証明すると思われた思想や実験、分析には多くの欺瞞が含まれていること
「惑星Aの住人」であることを前提とした社会システムや実験が成果を上げていること
本書ではそんなことが語られています。
一番興味深かったのは、「惑星Bの住人であることの証明や実験」に間違いや思い込み、欺瞞を見つけ出すパートでしょうかね。
・「蝿の王」
・ドーキンスの利己的遺伝子
・ジャレド・ダイヤモンドが紹介したイースター島の絶滅の物語
・スタンフォード監獄実験
・ミルグラムの電気ショック実験
・アイヒマンの「悪の陳腐さ」
・NYで殺人目撃者が警察を呼ばなかった物語
・「窓ガラス理論」
どれも有名な話です。
いくつかは「怪しい」と見られるようになっていたのは知っていましたが、こうやって「どんでん返し」をまとめて読まされるのは痛快ですらあります。
(個人的には「アイヒマン」のパートはチョット予想外でした。
ハンナ・アーレントの思想は、単なる「悪の陳腐さ」にとどまていなかった…という指摘も含めて。
チョット気にはなっていたんですが、やっぱり勉強した方がいいかな、ハンナ・アーレント)
人類が「惑星Aの住人」であるとして、ではなぜ、今の世界は善意に満ちた世界となっていないのか?
そこには「文明」の罠があり、リーダー/エリートの欺瞞と堕落があり、「人類」の生物的な性向も絡んでいる。
…ってあたりも中々興味深いです。
だからこそ難しい…って側面もあるんですけど。
さあ、「惑星A」「惑星B」。
あなたはどちらの惑星に住んでいますか?
住みたいと思いますか?
そりゃ「住みたい」のは<A>。
でも現実は…
っていう考えを変えるために書かれているが本書です。
その気になれるかどうか。
子供たちの未来を考えると、僕は「その気」になってもいいんじゃないかと思います。
多くの人が読んでくれるといいんですけどね。
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