・「グレート・ギャツビー」を追え
著者:ジョン・グリシャム 訳:村上春樹
出版:中央公論新社
「フィッツジェラルド絡みとはいえ、グリシャムを村上春樹が訳さなくても」
とは思ったんですが、最近のグリシャムだと日本じゃあんまり話題にならないかな?
そういう意味じゃ、「村上春樹訳」ってのは大きな「売り」になるんでしょうね。
読んでみれば面白いのは確かですし。
作品としてはグリシャムっぽいミステリー/サスペンス…ではなくて、「カミーノ・アイランド」を舞台に、そこで独立系書店を経営する男性と、彼の妻、彼らの友人たちのキャラクターの魅力と、彼らが作り上げる文学的コミュニテイの面白さ、で読ませる作品って感じです。
もちろんフィッツジェラルドの生原稿の強奪事件があって、それを巡る駆け引きなんかも読みどころではあるんですが(ちょっとマックイーンの「華麗なる賭け」を思い出しました)、そっちの方は「添え物」って印象もあるくらいです。
だからまあ、原題の「Camino Island」には納得。
確かに日本で売るには「弱すぎる」ってのもあるんでしょうが、「村上春樹訳」ならマンマでもよかったんじゃないかなぁ。
「華麗なるギャツビー」「長いお別れ」を、「グレート・ギャツビー」「ロング・グッドバイ」で押し通した訳者なんですから。
<『「グレート・ギャツビー」を追え』というタイトルは、なんだかクライブ・カッスラーの「ダーク・ピット」シリーズのタイトルを借用したみたいで、僕としては少しばかり気恥ずかしいのだが、どのように知恵を絞っても、これ以上のものを思いつけなかった。>(訳者あとがきより)
いやぁ、「ダーク・ピット」シリーズも原題とはまたちょっと違うから、これは「狙い」でしょうw。
そういうとこも含めて「楽しんでほしい」ってことかな。
楽しめたから、まあいいんですけど。
続編もあるようですが、そっちも「村上春樹訳」でいくのかしらん?
そうじゃなくても、「ブルース・ケーブル」ってキャラは気に入ったので、多分読むと思います。
村上春樹&出版社の「思惑通り」かもしれんけどw。