鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

バランス取れた本だと思います:読書録「なぜ中国人は財布を持たないのか」

・なぜ中国人は財布を持たないのか

著者:中島恵

出版:日経プレミアシリーズ(Kindle版)

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日本のメガバンクがQRコードでの決済に関して共通のプラットフォームを作ると言う報道が少し前にありました。

その背景には中国人のインバウンド対応と言うような解説もありましたが、ここにきてキャッシュレスが一気に住んでいる中国の状況は、「日本よりも進んでいる」と言う観点から色々と報道され始めています。

まぁ、一方で根強く「中国人批判」の論調も少なくないんですけどね。

 

深センの状況等をレポートした作品は何作か読んでいて、ITを中心としたメーカーとしての盛り上がりっていうのはある程度理解しているつもりですが、「それが社会の中でどう使われているか」についてはあまり書かれていなかったので、その点を確認したくて本書を手に取りました。

作者は、長く中国に関する報道をしているジャーナリストで、そういう意味では比較的中国寄りのスタンスをとっているかもしれませんが、読む限りにおいてはバランスが取れた作品だったと思います。

急速に進むスマホ利用したキャッシュレスについても、「リープフロッグであって、そもそもの社会資本が貧弱なままなのが心配である」と言う中国人自身の言葉なんかも紹介していて、安易な中国礼讃のような内容にはなっていません。

 

とは言え、やはりキャッシュレス社会の急速な浸透、それをベースにしたシェアビジネスの進展と言うのは目を見張るものがあります。

さらにその情報をベースに「信用リスク」までもが社会基盤としてデータ化されつつあるというのが中国の今の状況のようです。(「芝麻(ごま)信用」とか)

そのことが中国人自身の「行動」までも変えようとしていて、例えばマナーの向上なんかにも影響を与えている。

驚くべきことだと思いますし、それがここ2 、3年で成立したと言う事にはなおさら驚かされます。

 

もちろん「個人情報」の問題や、「ビックマザー」に対する懸念と言うのは払拭できないでしょう。僕自身、「ちょっとここまでは…」と思わなくもないです。

ここら辺は「共産党独裁」への懸念と言うのも影響しています。個人の信用リスクにまで独裁政権が関与してきたら、それは恐ろしいですから。

 

もっとも、最近の安倍政権をめぐるいざこざを見ていると、人間関係や権力関係の中での「忖度」で物事が歪められていくってのも、相当に恐ろしいことですが。

じゃあ、民間に任せれば…となると、Facebookの個人情報不正利用のことが頭に浮かんで来ます。)

 

僕自身はテクノロジーの発展というの前向きに捉えています。

したがって、キャッシュレスはどんどん進んでいくべきだと思っていますし(この点をリスクよりもメリットの方が多いと思っています)、信用リスクのデータ化と言うのも、最新の注意を払う必要はあるにしても、前向きに捉えるべき点が少なくないんじゃないかと思っています。(ブロックチェーンを活用するとかね)

なかなか日本社会じゃ難しいなぁ、とも思いますけどね。

 

最も身近な大国に中国がなりつつあるのは間違いありません。その国が何を考えているのか、その社会がどういう方向に向かっているのか。

この点を冷静に把握していく事は、これからの時代においては必要なことなんじゃないですかね。

そういう意味でも、こーゆー作品には意味があると思います。

 

…ていっても、嫌中派の人はこーゆーの読まないんだろうなぁ。