鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「消える」とは思わないけど…:読書録「自動車会社が消える日」

・自動車会社が消える日
著者:井上久男
出版:文春新書

自動車会社が消える日 (文春新書)

自動車会社が消える日 (文春新書)


作者も「消える」とは思ってないでしょうね。
ただ
<これまでの自動車産業のあり方が、今後も同じように続くことはないのではないか>
そのパラダイムシフトによって、いくつかの自動車メーカーが「退場」し、新しい「顔ぶれ」となる。
その危機意識は強く持ってるように思います。
その「危機意識」が強く「トヨタ」に向けられているのが、本書の特徴ですかね。


個人的には最近のトヨタの様々なチャレンジ(国内外自動車メーカーとの提携、やメーカー以外の企業との連携や、様々なビジネスモデルへのチャレンジ)については、トヨタの「危機意識」を反映したものだと見ていて、「流石」の思いを持っています。
作者も一面では同様なのですが、一面では人事面に強く出ている「内向き志向」に危機感を持っていて、そこに「衰退」の危険性を感じているようです。
色々やってるし、チャレンジングでもある。見ている方向性もかなりシュア。でも「ルールチェンジャー」「ルールメーカー」となること、あるいはそれらとの人脈を強固に作ることに目を背けすぎではないですか…というわけ。
豊田Pのパーソナリティにも触れる話であり、「どうかなぁ」と思わなくはないんですが、トランプのツイッター攻撃が出てきた背景や、その対応なんかを読むと、「あながち」って気もしてきます。


本書を読んで「なるほど」と思ったのは、
「自動車メーカーの規模ではなく、部品メーカーの規模が焦点となっている」
という指摘もです。
これはスマホにおける半導体なんかを考えれば「納得」の話であったりもするんですが、トヨタのグループ会社の再編や日産の関連会社売却、ホンダの企業提携、マツダトヨタの提携の意図…等はそういう視点で見た方がスッキリ見えるというのは確か。
世界規模で見たスマホメーカーが結果として何社残っているか?
それを考えると、パラダイムシフトの姿が明確化してくるようにも思います。


本書の後半はトヨタ、日産、ホンダ、マツダVW各社の現状と戦略を整理して紹介しています。
単体で世界戦略を練ることが可能なトヨタを見てただけじゃ見えてこないものがあって、面白かったです。逆境を乗り越えて世界戦略を練っている日産とVWの姿が興味深いですし、マツダトヨタがどう見ていて、何故提携したのかってのも参考になります。
個人的にはホンダを応援したいんですが…厳しいっちゃあ、厳しいかなぁ。(マツダのように逆転の可能性があるところが期待できるのがメーカーの面白さでもありますが)


個人的には実は「運転の楽しみ」ってのはあまり求めなくなってきてます。20代、30代の時は全然違ってたんですけどね。
そう言う意味じゃ、EV・自動運転の流れも、カーシャアの浸透も、Welcomeではあります。
ただまあ、なんか自動運転車のコンセプトカーって「?」なのが多くないですか?
そう言う観点じゃ、「デザイン」と言う切り口で「大逆転」は出来るんじゃないか、とも思ってるんですよ。
それが「日本から」だと、楽しいんだけどな〜!