鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

現状認識のために読む価値はある:読書録「米中もし戦わば」

・米中もし戦わば 戦争の地政学
著者:ピーター・ナヴァロ 訳:赤根洋子
出版:文藝春秋

米中もし戦わば

米中もし戦わば


なんか題名だけ見たら、「米中戦争のシミュレーション本」みたいな感じですが、実際には副題の方が内容に相応しい。まあ「現代アジアの軍事的な状況を政治的バランスを踏まえつつ論じた」ってところ。
もちろんその対象は「中国」です。
(原題は「CROUCHING TIGER What China's Militarism Means For The World」ですからね)


中国の軍事的な充実度が高まってること、
共産主義」という「秘密主義的」中央集権体制故に、その進捗や判断に「疑心暗鬼」にならざるを得ないこと、
一方でアメリカや西側諸国の民主主義・資本主義に司られた政治体制が、時に(軍事的観点から)不合理な判断を下すことがママあること、
etc、etc


非常に参考になりました。
日本の場合、保守右翼層が「中国脅威論」を声高に叫ぶ一方で、同じ層が中国政府や中国人への侮蔑的発言を繰り返し、侮るような感情を煽ってますが、本書を読むと、軍事戦略的見地から見て、中国政府の戦略ビジョンは相当に高いことが窺えます。
感情論でドウノコウノって問題じゃないように思いますがね。(左派に対する感情的発言も含め、ここら辺を切り分けて論じられないところが、日本の右派の弱いところじゃないかと思っています)


もっとも作者は有名な「中国脅威論者」。そう言う意味でバイアスがかかってる可能性がることは認識しておくべきでしょう。
テーマ的にも「軍事的側面」を中心に論じていますから、どうしても比重がハードパワーに偏る傾向があります(ソフトパワーの重要性は強く本書でも訴えられていますが、「そのためにはハードパワーも」という流れになりがち)。
もちろんそこは「政治」の領域。
作者のスタンスに、ちょっと「ウォー・マシーン」のブラッド・ピットが重なりましたw。
(ピーター・ナヴァロは学者さんですがね。ちなみにトランプ政権に入っていますが、その影響力は疑問視もされている様子。まあ、ここのところのトランプ政権の迷走ぶりを見てると、どうなるか分かりませんが)


ちょっと皮肉だなと思ったのは、中国を牽制するための同盟国との連携という観点から見ると、「最低でも(沖縄)県外」と言った鳩山政権がもっともアメリカ戦略に沿った発言をしていたってこと。
「駐留基地の分散」
って言うのは、対中戦略における「抑止力」として、非常に重要なポイントとしてあげられています。
まあ、もっとも鳩山さんがそんな考えで発言したとも思えないし、その後の経緯を見ると、この戦略の困難さも浮き彫りになってきてるんですがね。


今は北朝鮮が跳ねてて、米中もその対応で連携しているように見えます。
ただトランプ政権が機動的に動けない事態に落ち込みつつあるだけに、相対的に中国のプレゼンスが上がってくる危惧もあります。
「イヤな感じ」
ってのが、正直なところです。本書を読むとなおさらに