鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「甘い」かも?いや…:読書録「紙の動物園」

・紙の動物園
著者:ケン・リュウ 訳:古沢嘉通
出版:早川書房

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)


ウォーキングして、休憩をした喫茶店でコーヒーを飲みながら、収められた短編を読み始め…。
泣かされちゃったよ!
いやぁ、恥ずかしい、恥ずかしい。
老眼鏡を拭くふりをして涙を拭ったけど、周りの人には気づかれなかったかしらん(って、どんだけ自意識過剰なんだよw)。


2016年本屋大賞海外部門第2位。
一位は「書店主フィクリーのものがたり」。あれも良かったけど、僕は断然こちらを買います。SF短編集ってのが、ちょっと敷居を高くしてるってのはあるかもしれませんがね。


「甘い」ところがあるかもしれません。
「甘い」ってのは「安易なハッピーエンド」って意味じゃなく、ちょっと「感情に流れすぎ」って意味で。東洋趣味に流れすぎな点も、「東洋人」としては気になるところ。


…なぁんて言っても、本書が素晴らしい作品ぞろいなのは間違いありません。日本独自の編集による短編集だから「選りすぐり」ってのもあるでしょうが、元々の出来が良くなきゃ、こうも粒揃いにはならんでしょう。


喫茶店で泣かされたのは「文字占い師」。
「紙の動物園」、これも泣かされる。
ちょっと日本人としては気恥ずかしいけど、「もののあわれ」も良作。
「良い狩りを」のラストの鮮烈さにはゾクゾクきます。
「円弧」や「涙」のSF的な設定も…
って、収められた15編、ほぼハズレなし。
驚くべき水準の高さであり、バリエーションです。


今、作者の初めての長編作品が翻訳されてるんですが、もちろん読むつもり。
分冊された下巻が6月に発売されるようですから、一気に読ませてもらおうと思ってます。
短編の完成度の高さが、長編でどうなってるのか、ちょっと心配ではあるんですが、それ以上に楽しみなんですよね。
SFでこういう気分になるのは、久しぶりだなぁ〜。