鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

スッキリはしませんが、それが味:読書録「撃てない警官」「出署せず」

・撃てない警官

撃てない警官 (新潮文庫)

撃てない警官 (新潮文庫)


・出署せず

出署せず (新潮文庫)

出署せず (新潮文庫)


著者:安東能明
出版:新潮文庫(Kindle版)


今野敏の「倉島警部補シリーズ」を読んで、
「そういや、前に購入してたような…」
と思い出して、ライブラリーを遡って「発見」した作品w。
いやぁ、「積ん読」ならぬ、「DL読」になっちゃうリスクをヒシヒシと感じて、最近はすぐに買わずに「ほしいものリスト」に入れるだけにしてるんですが(そっちがすでに100を超えてるけどw)、結構残っちゃってるんですよね。「DL読」本。


で、このシリーズ。
官僚的な警官と言えば、横山秀夫の一連の警察官シリーズや、今野敏の「隠蔽捜査シリーズ」を思い出させますが、そのどっちよりも「リアル」路線。言い換えれば、「善悪の境界線が曖昧」なシリーズになります。(どちらかと言えば横山秀夫氏よりでしょうか)
読んで「スッキリ」はしませんなw。


こういう作品の場合、主人公自身が独自の「正義感」を持ってるとか(「隠蔽捜査シリーズ」はそう)、周りの登場人物にそういう人物がいて、主人公がその人物に感化されていくとかってパターンが多いと思うんですが、このシリーズはそういう色合いが薄いんですよね(一部にそれらしき人物はいますが)。
むしろそこを明確に描かないことで、「警察」という組織のプラスもマイナスも、少し距離を置いたところから描いている印象があります。
考えてみれば「警察署長」と言っても、30代、40代。
彼等が「人格者」であることを期待し、その「善導」に頼るには組織は大きすぎます。その中で如何にして「治安を守る」という警察組織を機能させるのか。
「現場の人間の踏ん張り」
ってパターンが多かったと思いますが、そこから一歩、本シリーズの場合は「組織」と言うものに視点を向けている印象があります。


そういう意味では「撃てない警官」のラストには考えさせられますね。
主人公に向けられる「問い」。
主人公の「選択」。
ハッキリと語られないんで、全然スッキリしないんですがw、ヒロイズムに支えられない/期待しない「正義を守る組織」というものを考えさせられます。


既に文庫で第三作が出ており、夏には長編も予定されているようです。
さて、どうしますかねぇ。