鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「長編」としての重量感には少し足りないかな?:読書録「46番目の密室」

・46番目の密室
著者:有栖川有栖
出版:講談社文庫(Kindle版)

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)


Huluで暇つぶしに観るドラマを探してたら、斎藤工主演の「火村英生の推理」が「見逃し」で見れるようになっていました。
何の気無しで第1話を見たら、割とテンポ感があって面白かったので、ついでに原作のシリーズ第一作目も読んでみるか…ってな感じでDL。
有名なシリーズであり、本格推理小説作家ですが、僕はほとんど読んだことなかったんですよね。このシリーズも初読でした。


探偵役の火村英生とワトソン役の有栖川有栖(作者とは別人格)。
この二人の「掛け合い漫才」的なやり取りがシリーズの読みどころ見所の一つなんだろうな、というのは、テレビシリーズを見るとすぐに想像がつきます。
シリーズ一作目なんで、どこらへんまでそこに意識的なのかはなんとも言えませんが、そういう雰囲気は確かに一作目からありますね。関西弁が飛び交う舞台設定そのものが、それを後押ししています。
この雰囲気はなかなか魅力的。


ただ一方で、「本格推理小説」としての出来はどうなんでしょう。
作者自身がその点についてはコメントされてますが、画期的なトリックではないというのは確かでしょう。
というか、個人的には「このネタで長編?」ってところに違和感すら感じました、
確かに登場人物たちの「やり取り」から面白く作品は読み進めることができるんですが、それは本格推理小説としては「添え物」であって、中核には「トリック」(+「動機」)があるはず。
でも、本作の場合、なんだかそれが「軽い」というか、「長編」の中核を成すほどのものじゃないというか…。


いや、面白く読めたんだから、それはそれでいいのかもしれないし、「本格推理」になにを求めるかっていう点は、あくまで個人的なもんなのかもしれませんがね。
少なくともこのシリーズは好評で、作品もたくさん出ているのですから、支持する読者層が少なからずいることは確かでしょう。
となれば僕の感覚は一般からはちょっとズレているのかも…。
(でもテレビドラマも「2時間ドラマ」じゃなくて、「1時間枠で1話完結」スタイルですから、あながち僕の感覚が突拍子もないとは思えなくもあるんですがね)


ちょっとここら辺、個人的に迷うところもあるので、次はシリーズの短編集を読んでみようかなと思っています。
このキャラ達の良さは、むしろ短編・中編に出るんじゃないか、と。
ま、確信はないんですけどね。