鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

もう一歩何かが欲しい:映画評「天空の蜂」

堤幸彦監督、江口洋介・本木雅弘主演の映画。
少し前に、この映画化を知って東野圭吾の原作を読みました。なかなかの良作。
で、それをどう映像化するのかな…というのが、まずは見所でした。



「天空の蜂」


よく原作を映像化してるな、と思います。
「ビッグB」という巨大ヘリも(CGを使ってるのかな?)リアル感を持って描けており、ありがちな「おもちゃ感」は回避できてると思います。
原発設備なんかも、リアル感をキープしてますね。作り物っぽさは(邦画としては)かなり上手く避けてるんじゃないでしょうか。


俳優陣も充実。
本木雅弘の狂気に近い強面と、哀切に満ちた過去パートのコントラストは見事ですし、柄本明・國村隼らのベテラン陣もしっかりと固めています。
個人的にはちょっと仲間由紀恵の扱いが弱い感じはあったんですが、原作からすれば、これはこういう感じなんですよね。
柄本明の相棒の若手刑事の熱演も良かったです。
江口洋介・綾野剛なんかもハマってたと思います。


で、あれば「言うことなし」のはずなんですが、なんか一歩踏み込み切れてないような気分が残りました。
多分、原作の「映画化」という点では合格点なんでしょう。
でも東日本大震災を経験した後の映画化として、どうだったのか?
そこを踏まえての「ラスト」なんでしょうが、なんだか、そこが一番薄っぺらになっちゃったようで…。
三島の「絶望」はもっと深いものがあるんじゃないかと。
東日本大震災の復興が進み、原発再稼働がシナリオに沿って動く「今」にこそ、三島の問いかけはつきつけられるように思いますし、製作者側のスタンスもそうだったんだと思いますが…。


じゃあどうすればよかったか?
その答えを僕も持ち合わせてないので、批判はできないんですけどね。