鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

割とあっさり「影」が明かされちゃうとこが:読書録「影の中の影」

・影の中の影
著者:月村了衛
出版:新潮社

影の中の影

影の中の影


「ジョン・ウィック」を観て、なんか「むちゃくちゃ強いヒーロー物」を読んでみたくなって、衝動買い。
世間的には「土漠の花」でブレイクしたんだけど、個人的には「機龍警察」の作者による、ハードボイルドアクション小説です。


まあ期待は満たされましたね。
無茶苦茶強い主人公なのは間違いありません。
「元・警官」ってとこから、なんか「ゴルゴ13」もどきの伝説の存在になっちゃうあたりには無理も感じなくもないんですがw、圧倒的な力の差を見せつけるアクションと、ちっぽけな権威をひっくり返す「設定」には爽快感があります。
ちょっと漫画じみた雰囲気がなきにしもあらず...ではありますがw。


むしろ本作については、
「ちょっと設定を明らさまにしすぎちゃう?」
って感じがあって、そこが個人的には「減点ポイント」でした。
登場して、すぐに自分の「過去」を自ら語っちゃうってのは、「影」と呼ばれる存在としてはいかがなもんでしょう?
それなりの「言い訳」はあるんですが、ここはやっぱり「小出し」にして、なおかつ「謎」の部分を残しておいた方が良かったと思いますね、
この作者はチャンと「機龍警察」の方ではそういう展開をしてますから、やってやれないわけじゃないと思うんですよ。
シリーズ化するつもりがないのかもしれませんが、登場人物の魅力を高める意味でも、ここら辺は抑制的に描いた方が良かったと思うですけどねぇ。
アクションで十分に「読ませる」腕があるだけに、ちょっと残念でした。


ただかなり高い水準の作品なのは確かだと思います。
新しい「冒険小説」の日本人作家が確かに出てきたってことでしょう。