鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「エンジェルメイカー」

・エンジェルメイカー
著者:ニック・ハーカウェイ 訳:黒原敏行
出版:早川書房

エンジェルメイカー (ハヤカワ・ミステリ)

エンジェルメイカー (ハヤカワ・ミステリ)


うろおぼえなんですが、最近イシグロカズオ氏がインタビューで、イギリスの後輩SF作家から受けた影響についてコメントしていました。ここのところのイシグロ作品にはSF的な設定や展開が見られますが、後輩作家のSF作品を読んだことが、自分の「殻」をひとつ破るキッカケになった・・・みたいな内容だったと思います。


そのインタビューを読んだときには、もう本書は読み始めてたんですが、なんだか通じるものを感じましたね。
インタビューで挙げてたのは「クラウス・アトラス」だったと記憶してるので、本書とも作者とも関係ないんですが、そういうことを想起させる「何か」が本書にはあったんですよ。
「真実を何パーセントか明らかにする機械」
とか言う設定。なんだか、イシグロ作品や村上春樹っぽいじゃないですかw。
それが「蜜蜂」の形をしているというのも、絶対的な「悪」が存在するってのも。


もちろん、しっかりエンタメはしてるんですけどね。終盤の主人公が「立ち上がる」展開なんか、「おおっ」って感じでしたし、読み終えてのスッキリ感もなかなかいい感じです。サービスシーンもありw。
でも一方で「理想機関」(「蜜蜂」なんですが)がどんな風に機能しているのか、そのことでどんな「破滅」がもたらされようとしているのか、「敵」の究極的な目的はなんなんか・・・ここら辺がピンと来ないんですよ。
単に僕の読解力不足なのかもしれないんですが・・・。
ただその「ピンと来ない」感が、ある種の「現代文学」的雰囲気につながってるところはあるかなぁ、と。
いいか、悪いかは、断言できませんが。
この作者、ジョン・ルカレの息子とか。
・・・と聞くと、何か腑に落ちるところがあるといいますかw。


饒舌な文体や複雑なストーリー構成なんかは、僕は結構好きですね。
ただ「続けて読みたい」(デビュー作となる前作が翻訳されてます)・・・とまではいきませんな。