鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか?」

・セブンーイレブンだけがなぜ勝ち続けるのか?
著者:緒方和行、田口香世
出版:日経ビジネス人文庫

セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか (日経ビジネス人文庫)

セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか (日経ビジネス人文庫)


上司からセブンーイレブンの「OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)」の取組みが「営業担当者施策」の参考になるのでは・・・との指摘があり、読んでみた作品。
特に「選んだ」というわけじゃなくて、店頭で並んでいるのを適当に購入しただけなんですがねw。でもチョイスとしては悪くなかったかも。
流通分野のジャーナリストとして、40年間もセブンイレブン/鈴木敏文氏を追いかけてきた作者(緒方和行)が、「集大成」として書いた作品で、「近くて便利」という新しいセブンイレブンのキャッチフレーズから、遡ってセブンイレブンの戦略を概覧しています。


こういうスタイルの場合、どうしても「後講釈」になるところがあって、「すべての戦略が今の成功に繋がっている」ってな感じになりがちです。
はっきり言って本書にもその傾向はありw。
間違いなくあったはずの「試行錯誤」や「失敗」、あるいは企業としての継続性にすらかかわるような「課題」(すぐに思いつくのは鈴木氏の「後継」ですね)なんかがスルーされてしまいます。
もっとも僕が読みたかったのはセブンイレブンの戦略の内容なので、そこら辺は特になくても良し。
と言う訳で「チョイスとしては悪くなかった」かと。


セブンイレブンを見たときに損保業界との「類似性」を見出すとしたら、「代理店制度」と「FC制度」でしょう。
損保の代理店はFCではありませんが、「直資ではなく、外部の組織(人材)をバリューチェーンの中に大きく組み込んでいる」と言う点は重なってみてもいいのではないかと。
「営業」がその「支援・サポート」にあるという意味では、損保社員の営業を「OFC」との比較において語るというのは「ありえる」と思います。


一方でそこから見て「違い」を考えるのも、思考実験としては興味深いです。
・損保代理店も地域密着であり、かなりの数がエリアにありますが、セブンイレブンの「ドミナント出店戦略」のような戦略的な設立はされていない。
・情報ネットワークはかなり結ばれているものの、代理店の情報全てが共有されているわけでなく、タイムリーでもない。
・代理店の持つ「課題」は、セブンイレブンのFC店よりも個別性が高いために、「支援」のあり方の個別性も高くならざると得ない。
・専業の代理店以外にも兼業で代理店業を営んでいるケースもあり、そもそもの「経営課題」に格差があるにもかかわらず、それらを同一営業担当者(もしくは組織)が支援する体制になっている。
etc、etc
特に個別性の高さによる「支援・サポート」の個別度の高さについては考えさせられます。
一方でそのことを「言い訳」にした個別支援・サポートへの踏み込みの甘さのようなものもあるのではないかというのも「恐れ」として感じたりもするんですよね。


ある業界での成功事例がそのまま他業界に通じるわけはありませんし、「時代」や「運」と言った要素も看過できないとは思います。
でも「思考実験」としては「あり」かな、と。
少なからず刺激は受けましたしね。