鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「『殺しあう』世界の読み方」

読書録:「殺しあう」世界の読み方
著者:佐藤優、宮崎学、田原総一朗
出版:アスコム

「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)

「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)



なんとも物騒な題名w。
基本的にはISによる日本人殺害を契機とした認識のもとに、こういう題名になっているようです。


<戦争に負けた日本は70年間、戦争に手を染めず平和国家を築いてきた。少なくとも日本人は、そのつもりでいたわけである。
ところが、いまや「国」を名乗る過激集団が、「日本はわれわれの敵だ。日本人と見れば即、殺す」と宣言する時代が始まってしまった。日本は、「殺しあう世界」にどう向きあえばよいのだろうか。>


ま、語り合う二人が、また物騒な人選でw。
基本的には安倍政権には批判的なスタンスの二人だから、まあ内容もそういう向きではあります。
「向き」ではあるんだけど、「知識人」としての「力」があるメンバーが語り合っている内容なので、結構読み応えはあったなぁ。
「殺しあう世界」の背景として「格差」問題を据えてるんだけど、「共産主義」との距離の近かった二人ですからね。「ピケティ」を導入として、「資本論」を視野に入れた議論をしてる辺り(前半)は、「格差問題」の知識整理にかなり役立つと思います。



後半は「政治」が絡みのお話。


<安倍政権が使う物差しは、ゼロの位置が最初から狂っている>
<自分たちが普通の人で、このところ世の中がだいぶ左に寄っているから、それを真ん中くらいまで戻すという「世直し」をやっている、と思っている>


ここんところの安保法制絡みのバタバタを見てると考えさせられるところがあります。(僕自身は、「政府の統治/執務能力の問題」と見てるんですがね。憲法学者の人選からその後の「言い訳」まで、ちょっとコレは・・・。民主党政権から自民党政権への揺り戻しは、ここを評価したはずなんですが)


「沖縄」の問題意識も、三人は高いですね。
民主党政権(鳩山政権)が「地獄の釜の蓋」を開けた訳ですが、開ける前から「地獄」はあった訳だから、これもまた「戦後レジーム」の一つ(しかも重要な)。
安倍政権のスタンス(戦後レジームからの脱却。今言ってないけど)を考えると、皮肉を感じざるを得ません。
無論、なんらかの「解」が僕の中にある訳ではないのですが・・・。


まあ政権との距離感で「色」があるのは間違いない作品です。
でもそれを超えて、一読に値するものはあったと思いますよ。