鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「キャパへの追想」

・キャパへの追走
著者:沢木耕太郎
出版:文藝春秋

キャパへの追走

キャパへの追走



「キャパの十字架」の姉妹編。
と言うか、「キャパの十字架」が本作のスピンオフ的な位置づけなんですね、連載の経緯から考えると。
もっとも作者自身の意図は、やっぱり「キャパの十字架」がメインで、本書に納められた連載は「きっかけ作り」に使われたみたいなもんのようですがw。


でも個人的にはこっちの方が好きですかね。
前作はナカナカ気合が入ってて、キャパの「伝説」への切り込み方にも大胆なものがありましが、それに至るまでの過程が、実にシツコくてw。
まあそうじゃないとあそこまで迫れなかったってのはあるんですが、時に「粘着質」とも思えるような拘りぶりをジックリ書かれていたので、ちょっと疲れちゃったところがあります。
単にコッチが根性なしだって話かもしれませんが。


本書でも、「同じ構図」を追い求める作者の姿には「キャパの十字架」が重なります。
でもコッチには「連載」の枠がありますからね。
自ずとそこらへんはサラッと書かれることになって、写真そのものやそれらへの考え、周辺情報などなどの方に話の重点が移ります。
僕としてはこれくらいで十分w。
楽しく読ませてもらいました。(作者からすれば、「俺の苦労が伝わっとらん」ってとこがあるかもしれませんがね)


とは言え「伝説」に切り込む作者の大胆さは、本書にも顔を出します。
ピカソの傑作「ゲルニカ」評。


<もし、人が、そうした説明を振り捨て、ただ素直に絵を見ることができたら、「ゲルニカ」を単なる思わせぶりな断片の集合体と感じることだろう。>


ま、そう感じなくもないんですが、バシッと言っちゃうところが立派。
埋め草的なエッセイとは一味違う…って言ったら贔屓のし過ぎかなw。