鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ユーミンの罪」

・ユーミンの罪
著者:酒井順子
出版:講談社現代新書



デビュー作「ひこうき雲」からバブル崩壊時期に重なる「DAWN PURPLE」までを取り上げ、ユーミンの作品やユーミンという「存在」が、その時代の女性にどのような影響を与えてきたかについて考察した作品。
・・・っつうか、「ユーミン・ファン」が、ユーミン作品を通して「あの頃の自分」を振り返り、考えるって感じかな。
酒井順子は1966年生まれ。
完全に同年代だけに、なかなか面白く読むことができた。
とは言え、



<ユーミンを聴かずにもっと自分の足元を見ていたら、違う人生もあったかもね>
<「本来ならばもっと落ち込んでいたのかもしれない人生の危機も、ユーミンのお陰で何とかくぐり抜けてきました。でも恋愛の数は豊富なのに今、私が独身でいるのは、ユーミンのせいで反省すべきところできちんと反省せずにきたせいかもしれない」>



・・・なんてあたりは、さすが「負け犬の遠吠え」の作者とは思うものの、ちょっと共感はできない。(そりゃね)



ユーミンにおける「一瞬」の肯定と、「永遠」の追求。
あるいは「助手席」感覚。



こういった分析は「さすがだな」と思うよ。
その向こうに見える「ユーミン」作品の方向性や、時代感は共感できるし、「なるほど」と思わせる指摘も少なくない。
気がつくと30年以上も荒井由美/松任谷由実を聴いてきた者にとっては、間違いなく一読の価値がある作品でした。



でも一番考えさせられたのは、本作で「語られていない」ことなんだよね。
発表順に作品を取り上げ、結構な考察を加えながら、取り上げられなかった作品。
「紅雀」
「時のないホテル」
でもこの二作は、「悲しいほどお天気」と並んで、私的ユーミン「ベスト3」なんだよなぁ。
ユーミン自身がこの二作については「例外的」な作品なのを指摘しているし、こうして並べてみると、確かに「浮いてるな」と思うんだけど、その作品にこそ惹かれてきた自分のユーミン作品との距離感を改めて考えさせられるというか・・・。



すごく乱暴な言い方をすると、「例外」であるが故に、これらの作品にはユーミンの持つ「刹那」と「永遠」の関係性、「時間」の甘さと切なさ、無常さが強く出ていて、そこにこそ強く惹かれるんじゃないか・・・と思うんだけどね。
それが「作為的」という風に位置づけられる可能性って言うのは、それはそれであるけど。
いまだに時折聞き返すことがあるのは、この三作くらいなんだけどな。
そういう意味じゃ、「ユーミン・ファン」としては僕も「例外的」なのかしらん。
ま、だからどうってこともないけどねw。