鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「一刀斎夢録」

・一刀斎夢録<上・下>
著者:浅田次郎
出版:文春文庫(Kindle版)



浅田版「新選組」第三作。
「壬生義士伝」「輪違屋糸里」・・・と来て、本作が締めって感じかなぁ。
それぞれが重なり合ってはいるんだけど、「新選組」という組織の顛末を通じて幕末=「侍の終焉」を、「初期(輪違屋糸里)」「中核期(壬生義士伝)」「終期(一刀斎夢録)」と描いてきたようにも見える。
そういう意味では「エピローグ」としての気配も本作にはあるんだよね。(もっとも僕は「輪違屋糸里」は読んでないんだけどさw)



その「エピローグ」としての寂しい雰囲気を、明治天皇崩御に際しての乃木将軍の自害事件と重ねるあたり、なかなか、なかなか。
こういう「仕掛け」は、ホントに浅田次郎は上手い。
そして主役としては取り上げていないが、間違いなく作者が最も惹かれている人物「土方歳三」をロマンティシズムたっぷりに描き上げたり(最後の「侍」としての死にっぷりをして、<向後の歴史において、勝安房守は偉大なる人物にとどまるであろうが、土方歳三は神とされる>とまで言っている)、西南戦争を西郷・大久保の策謀による「侍をまとめて葬り、徴兵たちを軍隊とするための演習」と宛推量してみたり・・・「侍の終焉」を巡る人々の思惑や役割を、斎藤一の「想像」として思う存分語っている。
西南戦争の件は常々僕もそう感じてたし、土方ファンとしては申し分ない描き方。
そういう僕にとってはバッチリはまる作品でした、



まあ後半、泣かされっぱなしだった「壬生義士伝」に比べると、本作の「泣き」はもう一つかな?
でも林信太郎には泣かされたし、市村鉄之助もなぁ・・・。
いや、「エピローグ」としてはもう十分でしょう。
「泣き」は少ないけど、「ロマン」はタップリでしたよ。