鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「里山資本主義」

・里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く
著者:藻谷浩介、NHK広島取材班
出版:角川oneテーマ21



こういう本が響くようになったのは、歳をとったから?w
まあ、東日本大震災の影響も大きいかなぁ。
物議を醸した「デフレの正体」の藻谷氏が関与した作品で、僕自身、必ずしも本書の主張に賛同できない面もあるんだけど、それでいながら「思った以上に心を動かされたな」ってのが読後の一番の感想。
主張や理念はおいておいて、一読する価値はあるんじゃないかなぁ。



現在のグローバル経済・日本経済を動かす理念を「マネー資本主義」と定義し、それに対して地域を中心に芽生えている動きを「里山資本主義」としている。
作者たち自身が言ってるように、「主義」とかいいながら、明確な「定義」はないんだけどね。
地産地消、Iターン/Uターン、エコエネルギー、地域通貨、リサイクル、地元産業回帰etc etc
いろーんな「流れ」がここでは紹介されている。
一言で言うと、「身の回りのもの/ことを使い切る」・・・って感じかね。
まあ、そういう理論や概念はともかく、実際に日本各地で動いている事例を取り上げながら、その脈動に注目する・・・っていうのが本書の立場だろう。
だからこそ、「里山資本主義」は「マネー資本主義」に取って代わるものではなく、その補完として位置づけられている。
見方を変えれば、そういった「多様性」を評価し、受け入れながら、今後の社会のあり方を考えてみましょう・・・ってとこかな。



事例そのものが具体的すぎて、逆に「個別性」が強調されて、
「たしかに面白いけど、他ではどうかなぁ」
ってのはある。
けど、こういう「個別」を積み上げて「流れ」にできたら・・・ってのは思わなくはないよ。
本書では妻の父の故郷・周防大島での実例が上げられているけど、
「これは面白そうだし、行ってみたいなぁ」
と思わされた。
自分が出来るかって言われると、「うーん・・・」なのが今一つですがw。



話としては終盤にある「スマートシティ」。
こっちの話をもっと膨らまして欲しかったという気もしている。
「個別」にしても、これは「産業」になる可能性があるし、そこに「里山資本主義」の精神が息づく「未来」をみることは可能だからね。
以前、そういう都市計画のプランを見たことがあるけど、
「夢物語」
という印象はありながらも、「技術」は追いつきつつある・・・ってことも感じたんだよなぁ。



まあ「高齢化社会」という観点から言うと、「里山資本主義」においてネックになるのは「交通機関」だと思っている。
この点に関する言及は本書ではあまりなかったけど、たとえば「80歳以上」ということを考えると、この問題は避けて通れないし、厳しい現実が地方にはあると思う。



一方で現在急速に進展している「自動運転技術」なんかを上手く絡めると、ここには別の視点が出てくるかもしれないけどね。
正直、人口密度が高い都市の路地で「自動運転」ってのはリスキーだと思うけど、過疎地なら一定程度は・・・って可能性を感じるんだけど、どうなんだろう?
こういうことなんかも考えて言く余地のある話だと思うよ。