鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「腰ぬけ愛国談義」

・半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義
著者:半藤一利、宮崎駿
出版:文春ジブリ文庫(Kindle版)



先日NHKで放送された対談の書籍版。
放送では「初対面の二人が語り合う」って構成だったけど、実際には半藤氏が「風立ちぬ」を試写する前に一回、試写後にもう一回と、二回にわたって対談をしたようだ。
その過半が本書に収められていて、なかなか興味深い内容だった。(アトリエの様子や、ちょっとした雑談なんかも窺えて、番組は番組で面白かったけどね)



まあ骨子は「予想の範疇」かな。
どちらも戦争体験があり、戦争に対する強い批判精神を持ちながら、「軍国少年」だった尻尾も意識している。反骨精神も「健在」であり、今の社会情勢に対する不満や懸念も強く持ちながらも、「諦観」には陥っていない。
「いやぁ、元気だなぁ」
ってのが一読しての感想だった。(82歳と72歳だからねw)



と同時に、
「そうか、このおっさんたちの後を継いで行くポジションに、そろそろ僕も入ってきたんだな」
ってことも意識させられた。
世代的には「団塊の世代」が前に控えてるけどw、こちとらそろそろ「50」が見えてきた世代。明らかに人口構成上は下の世代の方が多くなっている。
今までは戦中世代や団塊世代のアーダコーダに対して、「そんなこと言っても」とか「そりゃどうかな」みたいに批評的ポジションに立ってる感じだったけど、そろそろ「自分たちはこう考える」ってのを打ち出してくる年代になったんだな、ってこと。(遅い?)
「風立ぬ」の映画評で宇多丸氏が「そもそも第二次大戦の経緯を知らない層が観に来てる(そんな層は宮崎氏は想定していないが)」ってなことを言ってたけど、「彼らが知らない」という一方で、「我々が伝えてない」って側面も無視できないんじゃないかと思う。
「教えなくても、自分で学んでいくもの」
ってのも確かだけど、その学ぶ「土壌」となる部分を社会の中にどう形成していくかっていうのは、重要な視点だろう。



僕自身は半藤氏や宮崎氏の発言に対してさほどの違和感は持っていない。
一方で憲法改正に対しては彼らよりポジティブに考えているのも確か。(ただし96条先行論には反対)
そういう意味で正に次の世代への「ブリッジ」となるべきポジションにいることを強く意識させられた。
ま、端的に言えば、
「自分の子供にどう伝えるか」
ってことなんだけどね。
これ、考えてみると、結構難しい。
でも、しっかり考えないとなぁ。



ところでこの二人は「夏目漱石」好きでもある。(宮崎氏がそうだとは知らなかったけど)
その二人が一番オススメするのが「草枕」。
うーん、実は僕が苦手な作品なんだよね、あれ。
しかしこれだけ言われると、改めて読んでみるかなって気になるね。
今読んでみたら、感想も変わるかな?