鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「僕らはいつまで『ダメ出し社会』を続けるのか」「日本の選択」

・僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想
著者:荻上チキ
出版:幻冬舎新書(Kindle版)



・日本の選択 あなたはどりらを選びますか? 先送りできない日本2
著者:池上彰
出版:角川oneテーマ21(Kindle版)



Kindleで目について購入した作品。
多分、Kindle化されたのは最近だと思うんだけど、書かれたのはいずれも自民党政権への復帰前なんだよね。そういう意味じゃ、「ちょっとズレてるな」ってとこもあるんだけど、基本的には震災後の日本の現状と将来を見据えての作品なので、そのことで内容に変化があるってものでもない。
両者ともに民主党政権下の「デフレ」基調の経済政策(要は「節約」「増税」路線)に対しては懐疑的で、経済成長を重視した制作への転換を念頭に置いてると思うんだけど、これは「アベノミクス」が指向している方向性でもある。従って民主党政権下よりは両者の主張に近い方向転換がされたとも言えるんだけど、「アベノミクス」そのものの成果を云々できるような段階じゃないし、それで全てが解決できるものでもない。
両者が挙げているように、日本の現状にはより広範囲で根の深い課題はあり、それらに対して丁寧に対応し、変革して行く必要性がある・・・ってのが今の状況だろう。
「アベノミクス」が全ての処方箋になるなんてことは、そりゃないわw。



池上氏の作品は相変わらず具体的なテーマを挙げながら、分かりやすく整理してくれるとともに、読者に対して「選択」を迫る。
勿論、池上氏自身の「意見」というのもあるんだけど、それ以上に「こういう課題があるんですよ」という視点を提示してくれるところに池上作品の良さがあると僕は思っている。個々の項目については是々非々なんだけど、こういう俯瞰図を見せてくれるのはありがたいよね。
他の作品でも池上氏は「民主党政権の施策にも評価できるものはあった」とハッキリと示しているけど、これは僕も同感。特に所得再配分を若い層(例えば教育分野など)にすべき・・・というのは僕も全く賛成。
そこら辺をキッチリと説明できなかったことは民主党政権の戦略誤りだと思っている。(もっとも民主党全体としてもそういう「思想」を共有できてなかったようなところもあるから、これはこれで仕方ないんだけどね)



荻上氏は今までの日本の政治/経済/社会の変遷を整理した後に、今後の日本に必要な方向性に対して、市民が如何に参画して行くのかについて提議している。
ネット言論から出てきた人らしく、ネットの可能性を踏まえながら、「論理的」な言論/活動の必要性を打ち出している。「社会疫学的な思考」をベースとした「予防的アプローチ」と「対蹠的アプローチ」ってことになるんだけど、「確かにソレが出来たら」と思う一方で、「それがナカナカ・・・」ってのもあるな。
(<「社会疫学的な思考」とは、個人を不幸、病気にしてしまうような社会問題の原因が何で、どういう理由で広がって、それに対する有効な処方箋は何で、他の処方箋よりもどれだけそれが効くのかといった吟味を、あらゆる社会問題に対して丹念に行うことをいいます。>)
安倍首相はFB等のネット活用に積極的と言われてるけど、そこで構築されてる言論空間は相当に「感情」寄りな色彩が強いように思うからねぇ(排他的な圧力もある)。
ネット選挙が解禁されることで、さてここら辺はどうなるか?
ま、試行錯誤なのは間違いないけど、いい方向に転んで欲しいなぁ・・・と。



この手の本は一年経ったら鮮度が落ちちゃうけど、タイミングに読むなら、状況の確認や自分の考えの整理に実に役に立つ。
「新書」ってのはそういう性格のもんでもあるだろうけど(それが全てじゃないけど)、電子書籍はよりそういう性格の作品に相応しい形態だろう。(一年後の書籍の処分の手間を考えてもw)
だからこの手の作品の早めの電子化をぜひともお願いしたいところです。