鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「死ぬことを学ぶ」

・死ぬことを学ぶ
著者:福田和也
出版:新潮新書(電子書籍)



保守派の評論家による日本人の「死」を巡る考察というかエッセイと言うか・・・。
読む前は山田風太郎の「臨終図鑑」みたいな、「死に様」を紹介するような作品かと思ってたんだけど、それよりは一歩踏み込んで、取り上げた人物の「死」を巡って、日本人の死生観みたいなものについてアレコレ語っている。
読み始めた当初はチョット違和感があったけど、これはこれで面白かったかな。
ま、「考察」と言うほど体系的なものではないので、「エッセイ」かと。



もっとも第一章で取り上げている特攻隊員や暗殺者を巡る考察のあたりは、ちょっと保守派論壇の気配が強すぎて、引いちゃう感じもあったけどねw。
血盟団のようなテロリストに対して一定の評価をすること自体を否定するつもりは全くない。
彼らがそこに至らざるを得なかった時代背景には、僕自身も共感できるものは強くある、

ただ現代において、こういう形で考察をめぐらせるのであれば、むしろこういう動きに共感してしまう日本人の「短気さ」、
そこまで追い詰められないためには、どのように社会として対処し、政治勢力は如何なる方向に成熟していくべきか、

ここら辺を論じるべきじゃないかと思うんだよな。
政党政治の限界が同じように語られる気配がある「今」だからこそ・・・ね。



一方、そういう「生臭さ」から一歩引いて語られる文学者の「死」を巡る考察は面白いと思った。
「折口信夫」の墓なんか、確かに一度見てみたい・・・
と思ってたら、コレって「羽咋」にあるんだね。
金沢からはすぐ。
うーん、一度訪れねば・・・。(ま、行き着けるかどうか、何ともいえない雰囲気で書かれてたけど)

「フィクションを完成させるために、太宰治は死を選ばなければならなかった」

檀一雄と対比しての太宰も興味深く読めた。
個人的には太宰は苦手なんだけど・・・。



と言う訳で、「読み物」として気軽に読むには、割といい作品なんじゃないかと。
ソコから何を読み取るか。

それは人それぞれですなw。