・未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学
著者:宇野重規
出版:東京大学出版会
「政権奪取論」でスキルっぽい話を聞いたので、もうちょい理念的な政治の話を…と思って、目に付いた本書を購入。
作者は東大の教授。
橋下さんが言う、「実行を考えない学者」…とは言い切れないと思いますw。
豊島区にある「豊島岡女子学園」の高校生・中学生向けに行った講義をまとめたものですが、現実の政治の流れなんかにも積極的に言及して、かなりリアルで面白い内容になってます。
まあ、「政権奪取論」みたいに生臭い話にはなりませんがねw。
5回の講義は以下のような感じ。(「:」以降は僕が独断と偏見でまとめたサマリーw)
1 変わり行く世界と<私>:グローバル化が進む中での「民主主義」の限界
2 働くこと、生きること:女性の働き方、格差問題
3 人と一緒にいることの意味:ルソー等から見る民主主義の基本的理念
4 選挙について考えてみよう:選挙のあり方について
5 民主主義を使いこなすには:まとめ。プラグマティズムによる民主主義
<僕はこの講義で皆さん、「日本や世界にはこれだけの問題があって大変だ」と言いたいわけではありません。問題があることはみなさんも当然ご存知でしょう。いたずらに悲観的になるより、大切なのはそのような問題にどう取り組んでいるかです。みなさんが勇気を持って未来に進んでいくために、少しでも役に立てればと思い、僕はこの講義をしてきました。>
「政治」の話って、どうしてもネガティブになりがち。
まあ、うまく言ってたらそんな話、する必要もありませんしねw。
だからあえてこう言うスタンスで講義をしたのはGood。中高生には「未来」を見て欲しいです。
作者の最終的な落としどころは、
「プラグマティズム的な考えに根差した<熟議>の民主主義を目指すべきじゃないかな」
くらいでしょうか。
橋下さんに言わせたら、「理念的で実際的じゃない」って言われちゃう?w
まあ確かに海士町の事例なんかは、「それを大都市や国家の規模に敷衍するのは…」って思っちゃいますし。
ただ、ある意味、橋下さんが「政権奪取論」で言ってる、
「イデオロギーによるのではなく、マーケティングによって政策をピックアップし、<未来志向>の政党として、<古き良き日本>路線の自民党に対峙させ、そのせめぎ合いの中から、日本を成長させていく」
って言う考え方にも通じるところもあるんじゃないか、とも感じるんですがね。(熟議するにも、まずはそのテーマを提議する必要がありますから。今朝アップしたちきりんさんの提言なんかも、こういう位置付けと言えるかも
http://aso4045.hatenablog.com/entry/2018/10/09/085531)
…そう考えると、最後に取り上げられるハンナ・アーレントの言葉にも、より実践的な意味合いが。
「人間が生まれてきたのは始めるためである」ハンナ・アーレント
ちょっと耳が痛いとこもありますがね…。