鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「リフレはヤバい」「アメリカは日本経済の復活を知っている」

・リフレはヤバい
著者:小幡績
出版:ディスカヴァー携書(Kindle版)



・アメリカは日本経済の復活を知っている
著者:浜田宏一
出版:講談社



最初はKindleで「リフレはヤバい」を読んだんだよね。
で、その内容が結構偏ってる感じもあったんで、相対する作品も読んだ方がいいかなと思い(小幡氏もそのことを薦めているし)、その筆頭として浜田氏の作品を続けて読んでみた。(出版は「アメリカは〜」の方が先)
その比較をした結果は・・・



うーん、よく分からんw。
どっちの理論が正しいのか判断する能力は、残念ながら僕にはないようです。



もっともこの二作を比較するってのは、作品の性格が違ってて無理があるってのもあるかな?
「リフレはヤバい」が結構、仕組みや理論を丁寧に説明した作品なのに対して、「アメリカは〜」は全体的にはエッセイのような作品。
作者自身、本書を「社会学の本」と規定しており、デフレ/円高の経済学の本は次作に用意しているらしい。
理論的な比較をするなら、その作品と「リフレはヤバい」を比較すべきなんだろうね。



ただ「面白いな」と思ったのは、両者ともに「自分の理論が世界の主流」と主張してるところ。
そしてその観点からは、残念ながら浜田氏の方に分があるかなぁというのが印象だな。
いや、ホントのところは分かんないんだけどw、小幡氏が厳しく「リフレ派」を糾弾しながら、具体的なメンバーへの言及がほとんどないのに対して(自陣のメンバーもリフレ派のメンバーも)、浜田氏は自身の具体的な交際から双方のメンバーに対して丁寧に言及している。反対派に対しては厳しい批判も加えているんだけど、根底に「敬意」も感じさせるあたりは、読んでても気持ちいい。(「記者クラブ」等のメディア批判のところは、その印象からは逸脱するくらい舌鋒が厳しくなってるけど)
この点ではちょっと小幡氏のスタンスは品がなさ過ぎると感じさせられるね。(勿論、理論的な正しさに「品」は関係ないんだけどさw。)



あと「安倍晋三」に対する好意的なスタンスも印象的かな?
自分の論理を政策に取り込んだ安倍氏に対して浜田氏が好意的なのは当然として(それ以前から自民党との関係は深いようだが)、小幡氏が安倍氏を持ち上げる様はちょっと奇異な感じもするね。
このスタンスも、ちょっと品がなく見えるかw。
こういうところで印象を悪くするのは、決して小幡氏に取ってプラスにならんと思うんだけどなぁ。
(正直、分析や論理的な部分だけで作品を構成した方がずっと良かったと思う。ま、それで売れたかどうかは何とも言えんけど)



小幡氏が指摘するように、日本国債の金利上昇に大しては僕も嫌な感じを持っている。
一方で他国が大規模な金融緩和をする中で、その流れに追随しなかった日銀のスタンスのは、昭和大恐慌の時の金解禁を巡る日本のスタンスを想起させて、とても評価できない。
確かに金融緩和そのものの是非はあったかもしれないが、変動相場制の中では為替は「相対的」でしかない。その中で「倫理」や「正義」を持ち出しても、そりゃ筋違いというもの。
その高潔なスタンスは小説家あたりは誉めてくれるかもしれないけど、それで国民が飢えるようじゃ、とても施政とは言えないだろう。



ただリフレ派も「金融緩和だけでいい」と言ってる訳じゃなく、ポジションを修正した後の政策については反リフレ派に通じるところもあるようだ。
「アベノミクス」の三つの矢(金融/財政/産業)のうち、「財政政策」に対しては浜田氏も批判的な発言をしてたしね。
ここが最も政治家的には「やりたいところ」と思えるあたりが、「アベノミクス」に対する懸念難じゃないかと、僕も思っている。



何はともあれ、現時点では金融緩和の方向性は成果を出してると言ってもいいかもしれないが、実際の「成果」というのは「これから」だろう。
その「現実」の動きの中で、両者の理論は検証されて行く訳だ。
「経済学」ってのは、良くも悪くもそういう学問。
そういう意味じゃ、多かれ少なかれ「生臭さ」があるのは、やむを得んのかもしれんなw。