鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「決断する力」

・決断する力
著者:猪瀬直樹
出版:PHPビジネス新書(電子書籍)



本書については猪瀬氏自身がツイッター等で結構頻繁に紹介してるからねぇ。
「ツイッターは本の帯」
ってのは十分に理解してるんだけど、「まあ、いいかなぁ…」などと思ってた。(先行する「言葉の力」とかを読んでなかったのもあるし)
それが、ふとkinoppyを見たら電子書籍になってたので、「それなら」と読んでみた次第。
まあ、確かに読んでみれば、読んだなりのインパクトはある作品だワ。
「行動する作家」としては、頭抜けてるから、猪瀬直樹w。



作品としては、震災後の東京都副都知事としての自らの対応を中心に、非常時あるいは非常時に備えて、如何に決断し、行動すべきかについて語っている。
「自分語り」中心だから、場合によっては鼻に付くケースも少なくないと思うんだけど、本書に関してはあまりそんな印象は受けなかった。
それだけ、震災から今に至るまでの猪瀬直樹氏の「行動」に力があると言うことかな。
個別には異論があるトコもあるんだけど、「決断し、行動する」という点において僕は猪瀬氏には感服している。
批判ばっかり言ってる批評家とは、確かに一線を画してると思うよ。
(もっとも「ツイッター名言集」は、ちょっと「自分語り」臭が強いかもしんないけどねw)<戦争から原発まで、戦後社会はリスクを想定外とし、見ないふりをしてきた。あるときは外国にリスクを委ね、またあるときはリスクそのものを無視した。その異常な状況は、震災によって崩れたのである。
震災を通じて、むき出しの自然の暴力に向き合わなければならないことを、日本人は思い出した。>(p.451)<災後社会は「自己責任の時代」ということでもある。それは個人が全てを負うのではなく、日本列島で災害を生き抜いてきた記憶を持つ一員として、責任を分担するという意味だ。>(p.452)



「確かに」
と思う。
と同時に、その「記憶」が(少なくとも被災地以外では)薄れつつあるのでは、という懸念も覚えざるを得ない。
阪神大震災を忘れ、オウムを忘れたように、この震災も忘れつつあるのではないか、と。
(電力の問題に直面せざるを得ない福島原発については、まだ鮮明だとは思うけど…)



本書で著者は、震災のインパクトによる日本の「変革」を期待しているのだろう。
そこで重視されるのが、「決断する力」だ。
その萌芽は、確かに僕も感じている。
同時に、それを押し流す「忘却」の力も…。



日常に埋没する自分を、今一度、震災直後の危機感の中に呼び戻す。



本書の一番の「力」はそれかもしれない。



読む価値のある一冊だと思いますよ。