鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

丁寧な描写が世界観を生み出している:読書録「高瀬庄左衛門御留書」

・高瀬庄左衛門御留書

著者:砂原浩太朗

出版:講談社

f:id:aso4045:20210408182352j:image

 


藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」を思わせる

と言う評をどこかで読んで、気になって購入してしまいました。

読み始めて、一気に読了。

好きですね、こう言うの。

 


藤沢周平にしても、池波正太郎にしても、物語としての面白さに加えて、描き出すその「世界観」への共感が根底にあります。

「あ〜、ここへ行って、縁側でゴロゴロしてぇ」

…みたいなw。

 


本書にも確かに通じるものがあって、特に丁寧な風景描写が、読むものをその世界に誘ってくれます。

クド過ぎず、平易な文章で、それでいて「味わい」のある筆致。

まあ「ファンタジー」なんですが、一抹の苦さもあるその匙加減がナカナカです。

 


ストーリー的にはどうかなぁ。

時代小説って、「男(おっさん)のファンタジー」っぽいところがあると(個人的には)思ってるんですが、本書もそういう傾向はあるかな、と。(特に死んだ息子の嫁との関係)

<そこ>を飲み込めば、抑制の効いた良い物語だと思います。

個人的には<そこ>をもっと抑えても良かったとも思うんですが、それじゃあ枯れ過ぎかもしれんねw。

 


「三屋清左衛門」が、そうは言っても、ある程度の「成功者」であったのに対して、「高瀬庄左衛門」の人生には「悔い」と「不運」が付き纏います。

「それでも」

…と言うのが読ませどころかな。

それこそが「ファンタジー」なのかもしれませんが、んなこと言ってたら、こう言う小説を読む醍醐味がなくなりますがなw。

 

 

 

#高瀬庄左衛門御留書

#砂原浩太朗