鈴麻呂日記

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確かにこれは「完結編」:読書録「小説イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア」

・小説イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア

著者:塩野七生

出版:新潮文庫

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「3」を改めて読んで、

「キレイに終わってるやん」

と思ったんですが、25年ぶりの続編である本作を読むと、

「なるほど、<完結編>やわ」

とw。

 


物語は前作のすぐ後からスタート。

前半は「完結編」っぽく、これまでの物語のフォロー編になります。

特に1作目の「アルヴィーゼ」の遺児の件は、3巻に「匂わせ」はありましたが、確かにこう言う風に決着させる方がスッキリします。

仕事絡みではあるものの、イスタンブール・ローマの再訪は前作までをなぞる印象も。(フィレンツェは登場しませんが)

ここら辺は「サービス」でもあるかなw。

 


そして後半は、前作でヴェネツィアの<終わりのはじまり>に向き合うことを決意した主人公が、「如何に対峙していくか」が語られます。

その頂点が「レパントの海戦」。

なんとかしのぎ切ったこの戦いを巡る「政治的活動」が主人公にとっての最後の戦いとなり、ヴェネツィア/ルネサンスの「足掻き」となります。

それが時代の流れに対する「抵抗」でしかないことは、「海戦」後の世界情勢に表れてるわけですが…。

 


「なんで25年ぶりに書く必要があったのかな」

 


と思ってたんですが、読み終えてみれば納得。

4巻の中で、本作が最も面白く読めましたが、それはこれまでの3巻があればこそ…ですからね。

ただまあ「オリンピアがいないから色恋沙汰に流れず、権謀術数の歴史ドラマを思う存分楽しめた」って感じがしなくもありませんがw。

 


「佇まいの良い」人生を終えた主人公(レパントの海戦時点で70代半ば。亡くなったのは80代でしょうか)の最後のシーンは「良き人生」を送った人に相応しいものではあるのでしょう。

振り返れば、

「書かれて良かった<完結編>」

だし、

「このタイミングで書かれることに意味がある」

とも言えるかな、と。

 


作者がおそらく重ねているであろう「現代日本」が、ヴェネツィアのような「良い」<終わりのはじまり>を辿ることができるのか、

それに相応しい人材が出てくるのか、

その中で個々人が「佇まいの良い人生」を送ることができるのか、

 


それはなんとも言えませんがね。

 

 

 

#塩野七生

#小説イタリアルネサンス

#再びヴェネツィア