鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「獣の奏者」

・獣の奏者Ⅰ〜Ⅴ
著者:上橋菜穂子
出版:講談社文庫(iBook版)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)

獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)


息子が図書館で4巻まで借りてきて(5巻は「外伝」)、
「無茶面白かった〜」
と言ってたので、電子書籍版で一気買い。一週間ほどかけて「外伝」まで読み終えました。
無茶面白かった〜。


「上橋菜穂子」氏はもちろん知ってて、何度か「守り人」シリーズは読もうと手に取ったことはあるんですが、何となく読み通すことができずにいました。
本作も、多分息子の「推薦」がなければ、読み終えることはなかったと思います。何となく作品の「肌合い」みたいなものに違和感があって、ちょっと僕には敷居が高い感じなんですよ。
でも「読まず嫌い」はいけませんな。
今は、「もっと前に読んどきゃよかった」って気分です。
息子に本を推薦される日が来るとはねw。


作品は、
「Ⅰ闘蛇編」「Ⅱ王獣編」
「Ⅲ探求編」「Ⅳ完結編」
と2冊ずつの2部構成になっていて、それに「外伝」があって5冊。
作者自身が書いてますが、「闘蛇編」「王獣編」で一旦物語は終わってて、続きは当初予定されていませんでした。


この第一部の完成度は本当に高いです。
「母の死」からはじまり、ちょっと「ハイジ」的な牧歌的期間があって(作者は意識的です)、自分の運命と向き合い、前に進みながら、ついに絶望的状況に追い込まれる。
その最後の最後で切り返しのように「一筋の希望」が描かれ、スパッと物語が終わる。
このラストの気持ちよさと、全体の構成の見事さには感服しました。
それでいて作品のテーマや個々の設定/描写には、児童文学らしからぬ(作者は児童向けに書いたわけではないようですが)「深み」があります。
ここで終わってたら、「凄み」すら感じさせる「傑作」として評価され続けたんじゃないですかね。


じゃあ「第二部」が「蛇足」かというと、そんなことはありません。
構成としての「完成度」としては一部に劣るとしても、「人間」を描くという視点からは、この二部の方が上かもしれません(登場人物の年齢が上がってるからってのもありますが)。
「子供」のために「運命」と「しがらみ」を振り払おうとする「父」と「母」の苦闘が、その「子供」によって終わりを迎える。
という構図は第一部にも近いものがありながら、そこまでの切り口には至ってないんですがね。
でも個人的な感情移入は、二部の方が深かったように思います。


「外伝」では登場人物たちの「恋愛」が描かれています。
図書館にはこの外伝が置いてないようなんですが、意図的かなw。
ちょっと生々しいところがあるんですよ。
「女性作者らしい」って言っちゃうと偏見かもしれないけど、そう思わせる印象が確かにあります。
「読ませるなぁ」と、一気に読んじゃいましたが、「小学生にはどうかなぁ」…とも。
ここら辺、図書館の「見識」が働いてるのかもしれませんな(よう知らんけどw)。


何にせよ、実に豊潤な読書体験をさせてもらいました。
アンデルセン賞(だっけ?)も納得です。
「守り人」シリーズ、読もうかなぁ。