鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

シリーズっぽくなってきた:読書録「虚空の旅人」

・虚空の旅人
著者:上橋菜穂子
出版:偕成社



シリーズ中「旅人」がつくのは、「精霊の守り人」であった「チャグム」が主人公の物語…らしいです。
あとがきによると、もともとは「外伝」として書かれたようですが、読んでみると、本作によってシリーズが「シリーズ」としての骨格を持つキーになってる作品だと気付きます。


前作までは「異世界」との関係がメインだったのが、「現世」における国家間や政治勢力といった、「人間の欲」をめぐる勢力争いの要素に本作は強く踏み込んでいます。
「為政者はどうあるべきか?」
本作のテーマを一つ選ぶとしたら、コレでしょう。
ファンタジーはファンタジーなんですが、だいぶ「生臭く」なってます。
「事件」は終了していますが、「物語」は閉じていない。
「シリーズ」の展開を強く意識させられる作品になってます。


個人的にはチャグムが歩もうとしている道も理解できます。
理想としてはそちらであるべきであり、さらに作者が安易に「正しいものは正しいんだ」ってストーリー展開をしようとしてないところもよく分かります。
そうは思うものの、今の自分には、チャグムが嫌悪するカリーナたちの「権謀術数」のほうが、「為政者」としては望ましいんじゃないか、と思っちゃうんですけどね。
まあ、それじゃあ「児童文学」にならんけどw。


先に「獣の奏者」や「鹿の王」を読んでるんで、作者が安易な「勧善懲悪」に進めないことは予想できます。
だからこそ、シリーズとしてこれだけの「長さ」が必要になるのかもしれませんね。


次は「神の守り人」。
上下巻になります。
一気に読みたいから、タイミングをいつにするか。
シリーズに付き合う覚悟は、もう決めましたw。