鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「人工知能は人間を超えるか」

・人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
著者:松尾豊
出版:角川EPUB選書(Kindle版)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)



先日の電脳将棋戦は「人間」の勝利で幕を閉じましたね。
「なーんだ、将棋ソフトもまだまだか」
という思いもありますが、一方でソフトの限界を研究し尽くした上で、「通常の試合では使わない手」を使って棋士たちが勝利を納めたあたり、単純なPC VS人間という次元とは違うところまで来ちゃってる感もありました。
このスタイルでの対局は今回が最後のようですが、そういう意味では「潮時」かもしれません。


本書は「東大准教授に教わる『人工知能って、そんなことまでできるんですか?』」の著者による、「人工知能と現状と可能性」に関する作品。
最近読んだ「AIの衝撃」とかぶる部分も多いんですが、研究者本人が「現状を正確に伝えたい」(過剰な期待値を削ぎ落としたい)との動機で書いてるだけに、本書のほうが冷静な感じがあります。


<人工知能の60年に及ぶ研究で、いくつもの難問にぶつかってきたが、それらは「特徴表現の獲得」という問題に集約できること。そして、その問題がディープラーニングという当口調表現学習の方法によって、一部、解かれつつあること。特徴表現学習の研究が進めば、いままでの人工知能の研究成果とあわせて、高い認識能力や予測能力、行動能力、概念獲得能力、言語能力を持つ知能が実現する可能性があること。そのことは、大きな産業的インパクトも与えるであろうこと。知能と生命は別の話であり、人工知能が暴走して人類を脅かすような未来はこないこと。それより、軍事応用や産業上の独占などのほうが脅威であること。そして、日本には、技術と人材の土台があり、勝てるチャンスがあること。>


本書の内容は、作者がコンパクトにまとめてくれてますw。
基本的には「AIの衝撃」を読んで考えた「未来感」に大きな変更はありませんが、よりシッカリとした「立ち位置」を教えてくれる作品と言えると思いますね。
まあ「アトム」は登場しないかもしれませんし、「HAL」や「ターミネーター」の可能性はあまり心配しないでいいようですw。
でもビッグデータの活用を通して、人工知能の活躍の幅は広がり、そのことが産業や生活に大きな変革をもたらすことはまず間違いがない。
これは「未来図」としてかなり「現実的」と言っていいでしょう。


もっとも本書で紹介されている「あと10〜20年でなくなる職業」の中に「保険業者」があるのは複雑です。「ワトソン」をコールセンター部門に導入する話なんかもありますしね。
(<これを見ると、銀行の窓口担当者、不動産登記代行、保険代理店、証券会社の一般事務、税務申告書代行者など、金融・財務・税務系の仕事は影響が大きそうだ。>)
まあベースになってるデータが欧米の大学の研究なんで、「保険業」「保険代理店」のあり方が異なってるってのはあるとは思います。それでも「残る職業」の特徴として、<対人コミュニケーションが必要な職業は、当面は機会で置き換えるのが難しいのだろう。>と指摘されてるあたりは、結構重要なポイントになるでしょう。


作者は人工知能に対する「過剰な期待値」に対して警鐘を鳴らしていますし、実際、「現時点」は「まだまだ」な段階な様です(ようやく「ネコ」の概念がつかめる様になったくらいw)。
でもやっぱり僕は「確実に未来は変わる」と思いますし、思いたいですね。
その流れの中で、「どうあるべきか」「どうありたいか」を考え、行動する。
そういうスタンスを取りたいと考えています。
「HAL」が登場しないんなら、なおさらにw。