鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「指導者とは」

・指導者とは
著者:リチャード・ニクソン 訳:徳岡孝夫
出版:文春学藝ライブラリー

指導者とは (文春学藝ライブラリー)

指導者とは (文春学藝ライブラリー)



「世界史の極意」で佐藤優氏が推奨していた一冊。
文庫で1800円弱、Kindle版も出ていない…ということで、「うーん」だったんですが、勢いで買っちゃいました。
でも「正解」。
これはかなり面白い作品でした。


まあ「ニクソン」ですからね。
極めて「現実主義的」です。
そう言う意味ではリベラルに対する批判的な視線は一貫しています。


<現実の世界では、政治とは妥協の産物であり、民主主義とは政治の産物にほかならない。ステーツマンになろうと志す者は、まずポリティシャンでなければならない。>


ウォーターゲート事件を追求したマスメディアも基本的には「リベラル」でしょうからね。ニクソンとしては「面白くない」でしょうし、そう思って読むと、「ここら辺はちょっと自己弁護っぽい?」って感じがしないところもないではありません。
でも全体を通しての印象は、
「非常に論理的で、それでいて実際的。でも『理想』をないがしろにはしない」
というバランスのとれた内容になっています。
政治家個人としてのニクソンには色々問題があったんでしょうし、(ウォーターゲート事件のベースにあるような)「体質」には権力者の「驕り」を感じたりもしますが、実力・能力・見識に一段優れたものがあったのは間違いないんでしょう。
ま、そうじゃなきゃ、ベトナム戦争撤退、ニクソンショック、米ソ国交樹立等々、「歴史」に残る偉業はなすことができなかったですわね。
顔つきは暗いけどw。


本書ではニクソンが付き合いのあった世界の指導者が取り上げられ、彼が接した経験から、その人物の歴史的な歩み、評価まで手際よくまとめられています。
チャーチル、ドゴール、マッカーサー、吉田茂、アデナウアー、フルシチョフ(ブレジネフ)、周恩来(毛沢東)
吉田茂が取り上げられ、高評価なのは日本人としては「読みどころ」でしょうか?
まあ色々差し障りがあるからでしょうが、(結局、国内では権力を行使する立場に立てなかった)マッカーサー以外のアメリカの政治家を俎上にあげるのを避けているのは、ちょっと残念。
アイクやケネディ評なんか、聞いてみたかったですけどねw。


ある種、暗い陰謀家のイメージがある(少なくとも僕には)、「悪名高き」ニクソンが、こんなに内容があり、「読みどころ」の作品を書いているって言うのが一番の驚きでしょうか。
と同時に、そういう人物が政治家になるアメリカという国の「懐の深さ」に感じ入るところもあります。
なかなか日本の政治家はここまで書けないでしょう。
あんまり(外国の指導者と)付き合いも深くないってのもあるかもしれませんがw。
そう思うと、ちょっと寂しいですな。
小沢一郎氏あたりに期待かなぁ…w。(無理かなぁ)