鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「男性論 ECCE HOMO」

・男性論 ECCE HOMO
著者:ヤマザキマリ
出版:文春新書



「テルマエ・ロマエ」で一躍一線に飛び出したイタリア在住の漫画家による「男性論」。
っつっても、取り上げられてるのは「男性」だけじゃないんけどね。
(どっかで読んだんだけど)本書は「書き下ろし」じゃなくて、「語りおろし」らしい。それだけ話が広がりがちだったのかもしれない。
でもそのことで単なる「男性論」に治まらず、「日本人論」「人生論」のようなとこまで広がる内容になったのは「プラス」に評価できると思うよ。
それでいて気楽に読めるしね。



「原作料騒動」あたりで作者が日本の慣習に収まりきらない人物だってのは薄々感じてたけど(もっとも作者自身はそのことに真っ向から批判的ってわけでもない。その後の「日本的収拾の仕方」には批判的だけど)、ナカナカ面白い経歴の人なんだね。
そこからチョイスする「男性」「女性」が結構「変人」路線なのも、まあ作者の感覚に沿った当然の結果と言うか・・・。
でも
「最近強くなっている日本国内の『同調圧力』に屈しないような人材」
となると、こういう路線になりますな。
多様性への「寛容性」や「柔軟性」、そこから生まれる「ダイナミズム」なんかは、確かにグローバル化のコレからの時代に求められるものであり、今の日本社会から排斥されつつあるような要素にも感じる。
やっぱ閉塞感は高まってるような気がするんだよ、最近。



本書は本書で楽しめるんだけど、「面白いな」と思ったのは、本書で作者が取り上げる「フェデリーコ2世」。
これって塩野七生氏の新作で取り上げられてる人物でもあるんだよね(「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」)。
「カエサルばっかりじゃない」
と言って、本書ではカエサル以外のローマ人を作者は挙げてるんだけど、やっぱ好みは近いところにあるのかもしれないなぁ・・・と。
基本的には「大人」ってことだと思うんだけどさ。
一貫して塩野氏はそこを追求しているし、煎じ詰めれば本書で作者が言ってるのもそういうことですから。



「似顔絵」も味があるしw、言ってることもかなり「まとも」。
一読の価値はある作品ではないかと思います。